“未完の大器”秋広優人の「未来図」は? 打率か本塁打か…首脳陣が挙げる長所と課題

秋広優人(左)【写真:古川剛伊】
秋広優人(左)【写真:古川剛伊】

小久保監督の指導「王イズムに反する」

「身長のように、伸びていってほしいですね」。無限の可能性があるからこそ、縮こまった選手になってほしくない。トレードで加入した秋広優人内野手について話す村上隆行打撃コーチの口調には、期待と楽しみが滲んでいた。

 5月12日にリチャード内野手との電撃トレードが発表されてから1か月が経った。14日のDeNA戦(みずほPayPayドーム)では、今季初打点となる先制の2点適時打を含む、2安打2打点でヒーローに。移籍後初のお立ち台では「周りの選手と違って、どこからでも見えると思うので。これからも応援よろしくお願いします」と200センチの長身をネタにした自己紹介で笑いを誘った。

 ホークスへの入団会見で秋広は「率の方が自信がある」とコンタクト能力への自信を覗かせていた。一方で、高卒3年目の2023年には121試合に出場し、打率.273、10本塁打をマーク。長距離打者としての将来を期待する声もある。

 小久保裕紀監督は11日の巨人戦(みずほPayPayドーム)後、秋広に対し「練習から当てにいくようなバッティングは“王イズム”に反する」と強く振ることを指示した。未完の大器をチームはどのように育成する方針なのか。首脳陣に聞いた。

「完成系は見えていないです。長打も打てる中距離バッターですから。これからどう変化していくかは、こちらが決めるんじゃない。彼が成長していったところで、『もっとこうした方がいい』ってアドバイスを送るのが僕らなので」

村上コーチの評価…見えている課題

 村上コーチは「コンタクトはうまい」と評価する。一方で、打撃面でポイントのズレや、スイングで体がぶれてしまう癖も指摘する。打率を残すにしても、強いスイングは必要。だからこそ、「合わすだけではなくて、(ミート)ポイントでバットをしっかり走らせるように」。打撃練習ではしっかりと振るように指示している。

 秋広自身もそれについては理解している。「どうしてもコンタクトに比重を置くと、当てたいという気持ちが強くて、強いスイングができないまま打撃練習が終わる。監督からも言われたので。しっかり振りながらコンタクトできるように、と思います」と受け止める。

 13日の試合前には解説で本拠地を訪れていた秋山幸二氏、井口資仁氏と10分ほど談笑し、バットの使い方のアドバイスを受けたという。チームの未来を担ってくれるはず――。ホークスのレジェンド2人からの指導に期待の高さが窺えた。

「完成系をイメージすると、型にハマってしまう。型はいらない。大きな志を持って」と村上コーチ。まだ完成を求める時期ではない。打率を取る、本塁打を取るにしても自ら選択肢を狭める必要はない。底知れぬポテンシャルを秘める22歳だからこそ、青写真を描くのはまだまだ先でいい。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)