小久保監督「思い切ったことをしてみよう」
指揮官の“鶴の一声”が、勝利を呼び込んだ。13日のDeNA戦(みずほPayPayドーム)、試合前時点でセ・リーグ1位の防御率1.02を誇る左腕ケイから4点を奪い攻略。カード初戦を制し、交流戦で6勝3敗1分という成績を残している。
ケイの打席別の被打率を見ると、試合前時点で右打者が.174に対して、左打者は.258と打ち込んでいた。MLB時代も右打者が通算.258、左打者が.289。左打者を並べるのは有効に見える。この日、スタメンの右打者は8番の海野隆司捕手のみ。勢いに乗る野村勇内野手や攻守の要、今宮健太内野手をベンチに置いて、大胆な打順を敷いた。
昨秋の日本シリーズでは、ケイに7回を4安打無失点と抑え込まれていた。試合後、小久保裕紀監督は「右バッターの方が対応は難しそうだった。きのうも0点に終わったし、思い切ったことをしてみようかと」と意図を明かした。なぜ、リベンジを果たすことができたのか、首脳陣の言葉から紐解く。
「インサイドのカットボールを打ってもファウルにしかならないので、対応の仕方が難しい。150キロを超えたシュート、カット、真っすぐがある。そうそう打てないですよ。監督が『左を並べましょう』ということだったので、そうしたって感じです」
そう説明したのは村上隆行打撃コーチだ。株式会社DELTAのデータによると、ケイのカットボールによる失点減少を示す「Pitch Value」は5.4。これは規定投球回到達者の中ではトップの数字だ。「(右打者の内角に食い込む)対角のボールが1番厄介。左のインサイドに入ってくる真っすぐが嫌だというのもあるけど、角度がついて入るボールが難しい。そういう意味では左を並べようと」と振り返った。
選手にあった“共通認識”「まずしっかり…」
この日、ケイから放った8本の安打はいずれもセンターから逆方向への当たりだった。「真っすぐを狙っていこう」という意識が、選手の間でしっかり共有されていた。4回無死、中前打で出塁した川瀬晃内野手は「センターにとか、流すとかの前に、まずしっかり(狙い球を)絞った中で打席に立つというのはありました」と説明した。
村上コーチは「選手たちはその時(日本シリーズ)の悔しさもありますし、引っ張りにいってはいけないというのはわかっていた」と振り返る。奈良原浩ヘッドコーチは試合後、「監督のそういう時ってハマるから」と笑顔を浮かべた。続けて「監督の思い描いていたものを、選手が実行してくれたことがきょうの勝因かなと。本当にそれに尽きるかなと思います」と期待に応えたナインを称えていた。
3点目を奪った直後の5回1死一、三塁ではダメ押しとなる4点目を川瀬のセーフティスクイズで奪い取った。4点もあれば、先発のリバン・モイネロ投手には十分だった。「対策を練って提案してもらっている。コーチ陣に感謝です」と指揮官は笑顔。采配と選手の思いが噛み合い、チーム一丸となって奪った価値ある1勝だった。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)