2回に頭部死球を受けたものの…結果的にフル出場
思わず肝を冷やした瞬間だった。グラウンドに対する執念も、“2人だけの関係性”も垣間見えた。10日の巨人戦(みずほPayPayドーム)、「1番・中堅」で出場した周東佑京内野手をアクシデントが襲ったのは2回の打席だった。本拠地が騒然となった頭部への死球――。本人が試合後に語ったこと、そして甲斐拓也捕手との“直後の会話”に迫っていく。
2回1死一、二塁の場面。左腕・井上の3球目、内角へのツーシームが抜けて頭部を直撃した。井上は危険球退場となり、小久保裕紀監督も思わず駆け寄った場面。幸いにも周東の意識ははっきりしており、ベンチに戻って治療を受けた後もプレーを続行した。
誰もが驚いたシーン。結果的にフルイニング出場し、ゲームセットの瞬間も中堅を守った。何よりも心配なのは周東の状態だが、プレーを続行したのには本人なりの理由があった。
「全然痛くなかったので。あれがもし、モロに当たっていたら代わっていたと思いますけどね。かすったくらいだったので、大丈夫かなと」。そう周東が振り返ると、状況を見守っていた小久保監督も「ツバだったからね。脳震とうの検査をしておかしかったら外しますけど、大丈夫でした」と、補足するように説明した。
ベンチに戻り、およそ7分間の治療を終えてグラウンドに戻ってきた。奈良原浩ヘッドコーチも「びっくりしたし、心配でしたけどね。『大丈夫です』って言っていた」と胸をなでおろした。村上隆行打撃コーチも「僕は(ベンチの)裏にまで入っていかなかったですけど、よくしゃべっていましたよ。当たったのもツバのところでしたし、大丈夫だったんじゃないですか」と続けた。首脳陣2人の言葉からも、明るく振る舞っていたことが伝わってきた。
奈良原&村上コーチが明かしたベンチ裏でのやりとりとは
死球を受けた直後には左打席に倒れ込んだものの、すぐに上体を起こした。声をかけてきたのが、昨季まで共に戦ってきた甲斐だった。周東自身もが「チームで一番一緒にいた時間が長かった。本当に家族みたいな感じです」と表現していた存在。「『大丈夫か?』って言われたので『大丈夫です』と言いました」とやりとりを明かした。
5月17日のウエスタン・くふうハヤテ戦(タマスタ筑後)でも初回に頭部死球を受けた。「あれもすごかったですね」と振り返るが、当初の予定通り3打席を消化して途中交代した。当然、心配がつきまとう事象ではあるが、自ら交代を選択しないのは、選手会長が抱くグラウンドへの強い思いだろう。
初回、先頭打者として入った打席では左翼フェンス直撃の二塁打を放った。本人も「(スタンドまで)いったと思いました」と手応えを口にした一打だった。「今まで、フェンス手前とかはありましたけど。成長というか、いいスイングができているのかなと思います」。規定打席には届いていないものの、打率.355と高い水準を維持している。コンディションを整えながら、これからもグラウンドに立ち続けていく。
(竹村岳 / Gaku Takemura)