代打を送られた直後にメンタルコーチが声をかけた
チームの核として、着実に存在感を増している。8日のヤクルト戦(神宮)、3点を追う7回に野村勇内野手はリーグ4位タイとなる7号2ランを放った。試合後、小久保裕紀監督も「ここから一つ抜けるのが大事。一つ抜けて欲しいですね」と更なる期待を込めた。
前日の同カードでは先発出場したものの、同点の6回1死満塁という絶好のチャンスで代打を送られた。打者として、悔しくないはずがない。そんな中、テレビカメラが映したのは、伴元裕メンタルパフォーマンスコーチが野村の背中を叩き、2人が笑顔で会話をする場面だった。
伴コーチは5月3日からマネジャー登録となり、ベンチ入りが可能となった。チームは5月を15勝8敗と大きく勝ち越し、最大7あった借金を完済した。ベンチではナインに声をかけ、精神的なサポートを行う存在。この時、野村にどのような言葉をかけたのか――。会話の内容を聞くと、意外な答えが返ってきた。「慰めるとか、そういうことではなくて……」。
「『勇すごいな!』って話をしたんです」。伴コーチが語ったのは、野村の行動だった。代打を送られた直後、野村はベンチ最前列から、すぐに「(中村)晃さん! 晃さん!」と笑顔で声援を送っていたという。
「悔しい気持ちは確実にあったはずなんですよ。それでも、彼の素晴らしいところですよね。僕はすごいかっこいいなと思ったんです」
マネジャー登録されてから、ベンチでも選手への声掛けやアドバイスが可能となった。「人にも、状況にもよるんですけど、打たれた直後とか、失敗した直後とかに来られたくない人もいたりするので。その辺は結構見極めている」。タイミングを伺いながら、ベンチの空気を作り上げている。
驚いた野村の行動「チームのために…」
「結果的に(中村)晃が打って、盛り上がった。(野村の姿勢は)チームのために行っていた行動だと思うので」。交代が告げられても、野村は前を向いていたからこそ、伴コーチが改めて励ます必要はなかった。
チームのために見せた自身の行動。代打を送られた7日の試合は2三振を喫したが「(相手投手のボールが)良いコースに来ていたので、あまり落ち込むことなくという感じでした」と、割り切りながら受け入れていた。切り替える姿勢が翌日の本塁打につながったのは確かだ。
伴コーチの声かけについて「1人でベンチに下がるよりは、何か声をかけてもらったほうが気持ち的にも楽にはなる」と感謝する。自然とベンチに好循環が出来つつある。野村の行動がチームに“勝てる空気”をもたらすはずだ。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)