2軍降格から4日…4安打4打点「僕は打つしかない」
結果を出し続ける。単純明快かつ、もっとも険しい道のりを歩んでいかなければならない。「甘えは通じないですよね」。両軍合わせて27得点の乱打戦となった8日のウエスタン・阪神戦(タマスタ筑後)。存在感を見せたのが石塚綜一郎捕手だ。登録抹消からわずか4日、1軍首脳陣から授けられた“宿題”としっかり向き合っている。
「3番・左翼」で先発し、2号2ランを含む4安打4打点の大暴れ。小雨が降り、序盤から大量ビハインドという展開になったが「打席ではしっかり集中できていましたね」と静かに話す。4回1死二塁では、育成右腕の松原から左翼ネットを揺らす豪快アーチを放った。2軍では58打数ながら打率.362を記録。育成ドラフト出身の24歳が誇る打棒は、若鷹の中では頭ひとつ抜け出しているようにも見える。
1軍では開幕から故障者が相次ぎ、4月19日に初昇格。12試合に出場して打率.200、0本塁打、2打点という成績で6月4日に出場選手登録を抹消された。首脳陣からは、きっぱり課題を伝えられた。
「与えたのは、『左キラーになってこい』ということ。(相手先発が)右投手の時に出るというよりは、うちは左バッターが多いので。左がきたら石塚、となるように」
明かしたのは、村上隆行打撃コーチだ。1軍で放った5安打のうち、サウスポーから記録したのは2本。迷いなくスタメンを託せるほど、突出した長所を作ってきてほしいというのが首脳陣の願いだった。「貴重な長距離を打てる右バッターだし、左を苦にしない。“左専門”になると、バッティングスタイルもちょっと変わるんです。それが右の変化球投手に対して、役に立つこともあるし、ファームでも必要になってくることだと思います」。現役時代に通算147本塁打を記録した自身の経験も交えて解説した。
村上打撃コーチから与えた課題…「貴重な右バッター」
この日の5回2死満塁で迎えた第4打席では、1軍で47試合に登板している左腕・冨田から左翼線に2点二塁打を放った。再昇格するために石塚も「もちろん僕の場合は打つしかない。特に左投手を打たないといけないし、あの場面は『絶対打つ』という気持ちでしたね」と振り返る。「ホームランの打席もよかったんですけど、追い込まれてからの2ストライクアプローチも課題だったので。そこは上手くできた。1軍では必要になることなので」。
うっぷんを晴らすかのような4安打4打点の活躍。見守っていた松山秀明2軍監督も「彼は当然、バッティングが売り。いいものを見せていけば、また1軍に近づいていく」と目を細める。一塁には山川穂高内野手と中村晃外野手が控え、外野陣も近藤健介外野手、周東佑京内野手、柳町達外野手がいう強固な“牙城”もいる。中でも柳町は規定打席に到達し、打率.356でリーグトップに浮上。小久保裕紀監督にも「もう『外せない選手』から『チームを引っ張る、牽引する選手』になりました」と言わしめた。
ポジションという問題も含め、石塚はどのように戦っていけばいいのか。松山監督は、力強い言葉で背中を押す。「じゃあ彼がセンターやショートを守れたらチャンスは増えるかもしれないですよね? でもそれも能力だし、できないのならバットで頑張るしかない。選択肢はないですよね。『晃(中村)や柳町がいるから自分が出られない』と言えば話は進まないし、そういう世界なので」。枠が限られている以上、誰かを上回るほどの結果を残すしかない。単純であり、過酷な道のりだ。
石塚が「じゃあセンターやショートができれば…」
柳町はプロ6年目の今季、開幕を2軍で迎えた。4月1日に1軍昇格し、以降は欠かせない戦力としてチームを救っている。そんなヒットマンと比較しながら松山監督は言う。石塚に限らず、2軍の選手に「現実」を突きつけた。
「チャンスをもらっているじゃないですか。生かせていないからここにいる。今までやってきたキャリアの中で『あの時もっと成績を出していれば』と。できていれば今2軍にいることはないと思いますよ。それが現実なので。自分たちがチャンスを逃してきた結果、こうなっている。自分で掴んでいくしかない、向き合っていくしかないですよね、2軍の選手は。甘えは通じないです」
石塚はスタメン起用7試合で22打席を得た。数字としては多くないかもしれないが、レギュラーになった誰しもが「限られたチャンスで結果を出す」という過程を通ってきた。「みんなそれなりにもらっていますよ。直樹(佐藤)も勇(野村)も、柳町も。スタメンで出たところから自分で出番を掴んでいるじゃないですか。今1軍にいる選手の半分は、そういう選手じゃないですか?」と松山監督は続けて語った。
6月7日に24歳になったばかり。「1日1日を大切に。気がついたら1年が終わっていた、それくらい頑張っていきたいです」と今後を見据えた。プロ野球選手として避けては通れない壁を、石塚も乗り越えていかなくてはならない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)