6回1死満塁で中村晃を代打で起用→決勝打
試合が終盤に差し掛かる前に、迷いなく切り札を投入した。7日に神宮球場で行われたヤクルト戦。同点の6回1死満塁で小久保裕紀監督が動いた。ここまで2打数無安打だった野村勇内野手を下げ、4月12日以来のベンチスタートとなった中村晃外野手を代打に送った。
カウント2ボール1ストライクで、吉村のフォークを捉えた打球は中堅の前に弾んだ。2点適時打で勝ち越しに成功すると、この後も打線がつながりこの回一挙7得点。試合を決めたビッグイニングに小久保裕紀監督も「あそこがポイントでしたね」と評価した。
ベンチが動いたタイミングは試合の中盤、残り3イニングの攻撃を残す状況だった。この日ノーヒットながら、なお打率.289と高い数字を誇る野村になぜ代打を送ったのか。首脳陣が明かした決断の舞台裏は――。
「監督がその準備をしていたので。代打を送るってことは、最低でも犠牲フライというところ。切り札を出すことは考えていた」
そう答えたのは村上隆行打撃コーチだった。序盤は上沢直之投手と吉村の投手戦。好調の野村だからといって、6回に巡ってきた数少ないチャンスに切り札を温存する考えはなかった。「いけるところでいっておかないと。出し惜しみしたって仕方ないので」と勝負をかけた。
開幕前に小久保監督から「グラブを置いていい」と告げられ、代打専念で迎えた中村。ただ、相次ぐ故障者もあり、前日6日まで41試合連続でスタメン出場していた。5月15日には山川穂高内野手に代わり、4番に座った。「本来ならばなかった打席。幸せに感じてやっています」。本来とは大きく変わった方針の中でも、日々やるべきことをこなしていた。
代打初安打…中村晃が明かした首脳陣との会話
代打では今季初安打。中村によると、早い段階から小久保監督に出番がある可能性を伝えられていたという。「(6回の)前の前のイニング(4回)くらいですかね。『行くぞ』というか、『あるかもしれないから』というのは言われていたので」。入念な準備が好結果につながった。
試合後、小久保監督も「野村より上のバッターは(ベンチでは中村)晃しかいないので」と振り返った。「1打席1打席、集中するだけだと思うので。それに尽きるのかなと思います」。中村の表情には起用に応えられた充実感が満ちていた。絶大な信頼と入念な準備--。前日6日には痛すぎる逆転負けを喫していたチームを1日で立て直した一打だった。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)