前田悠「いいんちゃう?」 2巡目に配球“激変”…初バッテリーの藤田と試合前に交わした言葉

前田悠伍と藤田悠太郎【写真:竹村岳】
前田悠伍と藤田悠太郎【写真:竹村岳】

高卒2年目らしからぬ修正能力を発揮「確認しながら」

 ソフトバンクの2軍は7日、ウエスタン・リーグの阪神戦(タマスタ筑後)に0-3で敗戦した。先発した前田悠伍投手は同期入団&同学年の藤田悠太郎捕手とバッテリーを組み、5回無失点と試合を作った。高卒2年目の2人は、実戦の場で“異変”を共有しつつも、マウンド上できっちりと修正してみせた。それでも、試合後に藤田が口にしたのは「申し訳なかった」との言葉だった。

 初回1死で1軍経験が豊富な前川に中前打を浴びたものの、後続を打ち取って立ち上がりをしのいだ。その後も走者を出しながらも、要所を締める投球。4回にはボークも絡んで2死一、二塁となったが、育成のアルナエスを中飛に仕留めた。5回1死一、二塁では井上をチェンジアップで空振り三振、野口を投ゴロとゼロを並べて、リリーフにバトンを渡した。

 前田悠は2023年ドラフト1位で大阪桐蔭高から入団。藤田は同7位で、福岡大大濠高からホークス入りを果たした。ライブBPでバッテリーを組んだ経験はあったものの、実戦では初めてだった。ドラ1左腕は「よかったと思います」と、藤田のリードを振り返る。

「お互いの意見を言い合って『このバッターはこの入りでいいんちゃう?』っていう話はできました。まだまだ経験がお互いにないんですけど、そういうことは確認しながら投げられました。きょうはチェンジアップが抜け気味ではあったんですけど、その上で(対バッターという間合いで)『練習しよう』って話にもなりましたし、真っすぐだと打たれる感じがしたので」

 打者1巡目に投じた32球のうち、直球系は17球。一方で、2巡目からはパターンが“激変”した。35球中、直球系は9球のみ。左腕の最大の持ち味はチェンジアップだが「『そっちよりもフォークの方が(相手が)合っていないな』と藤田と話をしました。意思疎通もしながらいけたと思います」。高低を使って阪神打線を翻弄した。5回無失点という結果にも「得点圏になった時、投げミスなくいけたというのは、この試合ではよかったです」と頷いた。

マウンドで会話する前田悠伍と藤田悠太郎【写真:竹村岳】
マウンドで会話する前田悠伍と藤田悠太郎【写真:竹村岳】

 前田悠は、4月11日を最後に実戦登板から一時的に離脱した。高卒2年目の19歳。改めて体作りと向き合い、食事の回数も増やしながらスケールアップを試みた。課題は直球の強さ。それは理解した上で、この日は変化球を駆使することになった。「フォームのバランスが崩れていたので。スピードも出ていないし、バッターが感じる速度も遅かったと思う」。久々に中6日で上がったマウンド。“異変”を感じながら、必死に修正を図ろうとしていた。

「徳島(5月31日のオリックス戦)で少しズレがあって。1週間で直そうと思ったんですけど、それができなかった。軸足で耐えきれなかった感じです。真っすぐでいっても崩れるし、どう投げようかなって。そういうエラーが出た時の直し方はもっと勉強しないといけないです」

直球に課題を抱きながらも…マウンド上で行った“軌道修正”

 この日は最速147キロを計測したが、セットポジションになると140キロ前後にまで球速が落ちていた。直球に磨きをかけたいが、なかなか球が走らない。とはいえ、試合を崩すわけにもいかない。悩ましい状況の中、リードした藤田は「悠伍の真っすぐという課題に対して、僕としてはいいアプローチができなかったので、申し訳なかったです」と反省の言葉を口にした。2巡目から変化球を増やした理由も「悠伍も(直球の感覚に対して)自分で気づいた感じがしていた。打ち取れる最善の球を選んでいきました」という。

 2軍では試合前にバッテリーでミーティングを行い、相手打線へのアプローチを決めていく。藤田も「バッターに対してどういう配球をしていくか。自分が思っていることや『どうやっていきたいか要望があれば言ってほしい』とお願いしながら」と考えを擦り合わせた。投手の希望や課題を理解した上で、グラウンド上では勝利のために全力を尽くす。キャッチャーとして反省を抱きながらも、5回無失点に導いた。20歳の捕手にとっても収穫が多いゲームになったことは間違いない。

 前田悠は「1球1球、丁寧にいけたことはよかった。そういう意味での練習はできたと思います」と振り返る。藤田も「負けん気が強い投手。どうやって打ち取りたいのか、僕自身も悠伍に対して表現していけたら」と今後を見据えた。いつかは1軍で――。そんな目標は当然、共通しているはず。2人の現在地が見えたような登板だった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)