痛恨被弾の直後…無意識の行動に滲んだ優しさ 柳町達がオスナに無言で伝えた“願い”

ロベルト・オスナの背中を叩く柳町達【写真:古川剛伊】
ロベルト・オスナの背中を叩く柳町達【写真:古川剛伊】

モイネロが8回無失点18Kも…オスナが同点2ラン

 白球が高々と夜空に舞い上がると、神宮球場の記者席ではホークス番記者から悲鳴にも近い声が漏れた。6日に行われたヤクルト戦。痛恨の同点2ランを浴びた直後、ロベルト・オスナ投手はマウンド上で呆然と立ち尽くすしかなかった。

 8回を3安打無失点、球団記録を塗り替える18奪三振の力投を披露したリバン・モイネロ投手の6勝目が、あと3アウトのところでスルリとこぼれ落ちた。試合はそのまま延長戦に突入したが、10回に松本裕樹投手が武岡にサヨナラ弾を浴び、交流戦の連勝は3でストップした。

 試合後、バスに乗るナインには重い空気が漂っていた。オスナは何度も「チームに申し訳ない」と謝罪の言葉を繰り返した。そんな右腕に寄り添ったのは、柳町達外野手だった。

 無意識の行動だった。同点に追いつかれた後も9回を投げ抜き、肩を落としながらベンチに戻るオスナの背中を、柳町はポンと叩いた。

「うまくいく時もあれば、いかない時もあるので。『次も頑張ろう』って意味もあったのかなと思います」

 自身は「3番・左翼」で出場し、5戦連続のマルチ安打をマーク。ただ、代走で出場した緒方理貢が守備固めとして左翼に入り、最終回はベンチから戦況を見守った。ベンチに戻ってきた助っ人は下を向き、声をかけにくい雰囲気だった。それでも「次も頑張ってもらいたいと思っているので」。自然と足が動いた。

オスナが繰り返した謝罪ともう一つの言葉

 オスナ自身は、柳町の行動そのものに気付く余裕はなかったという。「申し訳ない気持ちと、ベンチに戻って誰かの顔を見る余裕もなかった。下の方を見ていました」。それでも、謝罪とともに何度も繰り返したのは「野手のために」という言葉。普段からともに戦う仲間への感謝の気持ちを抱いているからこそ、貢献できなかったことが悔しかった。

 あと1歩のところで白星を逃した一戦は、決して軽くはない。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「見ての通り」と厳しい言葉で評価した。それでも、まだ6月は始まったばかり。前を向く気持ちこそが、次の勝利を引き寄せる。柳町の行動は、チームを支える大きな力になるはずだ。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)