栗原陵矢、6番起用の“背景” 山川に続き聖域なき采配…首脳陣が明かした決断の瞬間

6番で起用された栗原陵矢【写真:古川剛伊】
6番で起用された栗原陵矢【写真:古川剛伊】

今季初めて6番に座った栗原陵矢

 迷いなく決断した。27日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。栗原陵矢内野手が今季初めて6番に座った。右脇腹痛や首の違和感で数試合を欠場したものの、これまで出場した29試合のうち、27試合で3番を任されてきた。25日のオリックス戦(鹿児島)では今季初の5番で起用され、この日は近藤健介外野手の復帰により、さらに1つ打順が下がった。

 ここまで打率.187、2本塁打、7打点、OPS.548。昨季はサードのレギュラーとしてゴールデン・グラブ賞とベストナインをダブル受賞した男が、今季は何に苦しんでいるのか。そして、首脳陣が打順を下げる決断に至った瞬間とは――。

「近藤が戻ってきたら、というのは考えていました。今の(中村)晃や(柳町)達の状態を見ると、彼らは選球眼も良いですから」。そう語るのは、村上隆行打撃コーチだ。柳町は規定打席未到達ながらリーグトップの24四球。中村も22四球で2位タイにつけている。「やっぱり良い選手をつなげておいた方がいいので」。15日には山川穂高内野手を移籍後初めて7番起用。勝つために、不動の4番に続いて“聖域”にメスを入れた。

王貞治球団会長から背中を叩かれる栗原陵矢【写真:古川剛伊】
王貞治球団会長から背中を叩かれる栗原陵矢【写真:古川剛伊】

 この日、6番に座った栗原は4打数ノーヒット。2点を追う8回2死一、二塁では二ゴロに倒れた。小久保裕紀監督は試合後、8回の場面で代打を考えなかったのかと問われ、「チームが勝つためにやっているので。状態が上がらなければ考えますよ、当然」と言及した。そんな中、村上コーチが指摘したのは少しのズレだった。

「ボールを捕まえきれていない。きょうも詰まっているので。打ちたいという気持ちが強すぎて、ボール球にも手を出してしまう。さらに手を出しているから、見ていると甘いボールを見逃してしまう。悪いサイクルに入っているだけなので。何か1つ、歯車が少しだけズレている。1つはまれば、それもある程度いい状態で回っていくと思うんですけどね。背中を押してあげるしかないので」

どん底の現状で救われた近藤からの言葉「ほとんど…」

 どん底の現状を、栗原自身が一番理解している。「苦しいですし、悔しいですけど、そこを今少し通り越して。野球がもっともっと上手くならないといけないというか。『野球下手やな』っていう感じですかね」。試合後には苦しい胸中を明かした。そんな栗原にとって、転機になったのは近藤の復帰だった。

 近藤は試合前から栗原の打撃練習を見守り、試合後も打撃練習に付き添い、アドバイスを送ったという。「自分から『こうなんですけど』って聞くよりも、見ていただいて、アドバイスをもらったって感じです」。自ら求めたことを明かした。

「きょう、ロッカーで会って喋っていた時に『ほとんど全試合、(栗原の)全打席を見ている』っていう話をされたので。おそらく、きょう見る前から『こうなっている』っていうのは、多分ある程度わかった中で見ていただけたのかな」

 打順は下がったが、近藤の存在によって混乱していた思考が整理されつつある。「まだまだ苦しむことはあると思いますけど、明日やるべきこと、自分がやらないといけないことは明確になった」と、少しずつ前を向いている。村上コーチも「近藤が帰ってきたことによって、いい感じにはなっていくんじゃないかな。いい見本だから」と相乗効果を期待する。

 どの打順に入ろうがやるべきことは変わらない。「6番、7番に本来の3番、4番がいるとね。相手の脅威にもなるでしょうし」と村上コーチ。再び借金生活に入ったチームを救うには栗原の復活が不可欠。苦しみの中でも前を向く姿が、向上のきっかけになるはずだ。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)