突然の誘い「きょう何するん?」 初勝利の夜…前田純&松本晴、同学年の「打ち上げ」

松本晴と前田純【写真:竹村岳】
松本晴と前田純【写真:竹村岳】

15日の西武戦で今季初勝利「最高です!」

 勝利の余韻が残った試合後。みずほPayPayドームの取材エリアに、嬉しそうな声が聞こえてきた。「打ち上げ行ってきます!」。ニコニコの笑顔で現れたのは、松本晴投手と前田純投手だった。

 2000年生まれ世代の同学年で、大卒3年目のシーズン。前田純は開幕からローテーションに入り、ここまで7試合に登板して1勝1敗、防御率2.29の成績を残している。松本晴も同じく開幕から1軍の戦力としてチームを支えてきた。中継ぎとして12試合連続無失点と結果を残し、21日の日本ハム戦(エスコンフィールド)では先発マウンドを託された。

 2人で1試合を投げ抜き、待望の初白星を手に入れた。15日の西武戦(みずほPayPayドーム)で前田純が先発し、7回無失点の好投。松本晴が2回無失点でバトンを繋ぎ、獅子打線を完封した。ヒーローインタビューで「最高です!」を連呼した背番号51には、チームメートから「あんな姿、見たことない」という声が聞こえてきた。それほど嬉しかった1勝だ。「打ち上げ行ってきます」と、両左腕がドームを後にしたのはこの日の出来事だった。

 2時間29分という試合時間。「ゲームが終わってから、純がウエートしようとしていたんです。なので『あしたにしようや。メキシカン食べに行こう』って誘いました(笑)。試合が終わるのも早かったですし、ヒーローインタビューが終わって、ロッカーに戻って、『純きょう何するん?』みたいな」と松本晴が明かす。サウナを2セットして汗を流した後、福岡市内のメキシコ料理店へ。「タコスとブリトー、デザートを食べて帰りました」と、お互いの登板を労った。

 前田純も「お祝いというよりも、ただご飯を食べに行った感じです」と照れ笑いする。 ヒーローインタビューでは、周囲を驚かせるほど大きな声で「最高です!」を連呼した。その直後の“打ち上げ”なのだから、興奮も残っているかと思いきや「逆に落ち着いていました。一旦ホッとする感じで『ああ、よかった』って」と胸を撫で下ろしていた。2025年初白星の後は、少し辛めのメキシコ料理。これからも忘れない、しみじみとするような瞬間だったはずだ。

ヒーローインタビューで「最高です」と叫ぶ前田純【写真:古川剛伊】
ヒーローインタビューで「最高です」と叫ぶ前田純【写真:古川剛伊】

白星がつかなくとも…前田純は「変えなかった」

 開幕からローテーションに入りながらも、なかなか白星がつかない日々だった。6戦目で掴んだ1勝目。「人生初勝利というわけではないし、込み上げてくるものは去年の方があったんですけど。メンタルとしては『勝ちたい』というのはあったので」と、勝利に向かって手を伸ばしてきた。白星という形で結果がついてこなかった中でも、24歳の左腕はブレなかった。

「変えないことです。『やばいやばい』って思ったらドツボに入りそうだったので、いつか勝てるだろうと思いながら。とにかく自分の仕事を全うするようにしていました。僕はルーティンを作らないように意識しています。晴はなんでもきっちりするタイプですけど、この日はこれをするって決めすぎると僕はストレスになってしまいそうで」

 バッテリーを組んだ渡邉も2000年生まれの同学年。今季7度の先発で5度バッテリーを組み、15日の西武戦では一緒にヒーローインタビューに選ばれた。「やっぱり投げやすいです。陸はけっこう言う時はズバッと言いますね。『俺を信じろ』って。サインを出す時も『ここは真っすぐ』みたいな感じの時があるんです。だから意思疎通がしやすいです」と信頼を寄せる存在だ。

松本晴と渡邉陸【写真:古川剛伊】
松本晴と渡邉陸【写真:古川剛伊】

渡邉陸も同じ2000年生まれ…サインから伝わる強い意思

 5月21日の日本ハム戦は松本晴、22日は前田純が先発した。自分の“前”を投げた同学年の姿に「中継ぎから先発になると雰囲気も違うと思う。調整も、中6日もなかったので、すごさを感じましたね。メンタル力がすごいです」とうなるしかなかった。「晴はとにかくA型気質なんですよね。なんでも、決める。自分の場合はきちっとしすぎたら力みに繋がる気がするんですけど、晴はそれを自信に変えている感じです」と、常に刺激を受けている。

 前田純が「(自分と松本晴は)真逆みたい。僕の中では友でありライバルです。やっぱりいいピッチングをしたら『負けないぞ』って思うし、支え合いながら上がっていけたら」と言えば、松本晴も「同じ年で純もいて、陸もいる。一緒に試合を作れたのはやっぱり気持ちいいですよね」とうなずいた。ともにチームの勝利に貢献したい。“最高の打ち上げ”はきっと、秋に味わうビールかけだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)