又吉克樹の苦悩「何してんやろ」 防御率6.59、“怠慢”指摘も…手探りな違和感の正体

又吉克樹(左)と話す小笠原孝2軍投手コーチ【写真:竹村岳】
又吉克樹(左)と話す小笠原孝2軍投手コーチ【写真:竹村岳】

22日の2軍中日戦で3回6失点KO

「本当に自分でも何してんやろ……」。思わず本音が漏れた。夕暮れ時となったタマスタ筑後の室内練習場。2軍戦を終えたばかりの又吉克樹投手は質問に答えつつも、どこか腑に落ちない表情を浮かべていた。

 4年契約の最終年。今春キャンプの前には「ダメなら引退」とまで覚悟を語ったシーズンだった。オープン戦では5試合の登板で防御率1.69と好成績をマークしながらも、開幕メンバーから漏れた。活路を見いだすべく先発に転向したが、ここまで2軍では6先発で1勝3敗、防御率6.59と振るわない。

 古巣との対戦となった22日のウエスタン・中日戦(タマスタ筑後)では3回を投げて5安打4四球6失点。カバーリングが遅れるなどのプレーも目立ち、小笠原孝2軍投手コーチからは「そういうところをちゃんとやってくれよ」と厳しい言葉で指摘された。ただ、又吉自身の中ではプロ11年間で経験したことがない違和感を覚えていた。

「悪いピッチングをしたなと思います。どうにもならなかった。前回登板は点を取られましたけど、3イニングは0で抑えていた。きょうはゼロで抑えるところもなく終わっているので」

小笠原コーチから「そんなこと言われる年齢でもない」

 試合を振り返る言葉に悔しさと苦悩がにじみ出ていた。「なんでかわからない。意図的にボールゾーンへ外しにいっているのに、結果的に外れていないっていう」。投球にミスはつきもの。ただ、意図した通りのコースに投げられないのではなく、“意図通りに投げたつもり”なのにここまで結果が違うというのは、プロ11年目にして初めて陥った感覚だった。

 試合後、小笠原コーチから指摘されたのはカバーリングなどの遅れだった。怠慢的なプレーと見なされ、「そんなことを言われる年齢でもないし、やれるのはわかっているんだから。それでも切り替えて細かいところをやらないと」と諭されるように告げられた。ただ、単なる気の緩みではなかった。結果としては遅れて見えたが、感覚のズレが原因で引き起こされたものだった。

「想定しているところに投げ切れていないから、(打者が)打った時にすぐにスタートを切れない。打った瞬間に『あ、飛んだな』って確認してから、カバーに行くしかないので。言い方は悪いですけど、カバーリングを含めてきょうは全部が雑に見えるようなピッチングをしてしまった」

自主トレで明かしていた覚悟「もうダメなら引退」

 小笠原コーチ自身は試合後、又吉について厳しい言葉を述べた。「見ての通り。彼の持ち味が出せなかった。先発転向は全然関係ないです。何試合も投げているし、きょうは技術不足。それ以前の問題」。特に指摘したのは、左打者の内角へのボールがシュート気味に甘く入ってしまうことだった。「それを打たれて、もっと際どいところを狙いすぎて、ずれてボールになって。カウントを悪くして自分で苦しんでいた」と指摘した。

 今季でプロ12年目。通算503試合登板、173ホールドと出色のキャリアを誇るが、キャンプ前の自主トレでは「もうダメなら引退ですよ。その気持ちで今やっています」と覚悟を決めていた。確固たる立ち位置を築いてきたリリーフから先発に転向。もがき苦しみながらも、再び光り輝ける道を見いだそうとしている。

 先発は中継ぎと違い、1週間に1回の登板のために準備をする。「1週間、この悔しい気持ちを持ち続けて練習ができるかっていうところかなと思います。『次、絶対にやり返してやるんだ』と。チームが違ったとしても、とにかく次は結果を」。もがきながらも前に進む。必ず這い上がるという覚悟を胸に、次のマウンドに上がる。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)