「渡邉君を信じた」大江竜聖“満点デビュー”の舞台裏 登板前の2人の会話、好投導いた配慮

大江竜聖(左)、渡邉陸【写真:竹村岳、古川剛伊】
大江竜聖(左)、渡邉陸【写真:竹村岳、古川剛伊】

大江が3者凡退に打ち取るデビュー戦

 2人の息がピッタリと合っていた。25日のオリックス戦(鹿児島)、新加入した大江竜聖投手が移籍後初登板。1イニングを3者凡退に抑えるデビューを果たした。リチャード内野手との交換トレードで、秋広優人内野手とともに巨人からホークスへやってきたばかりの左腕。この日出場選手登録されると、早速8回にマウンドへ。その快投を陰で支えたのが、渡邉陸捕手だった。

 大江が移籍してきたのは12日のこと。入団後は2軍で調整を行ってきた。1軍でプレーする渡邉にとっても当然、初顔合わせとなった。試合後、「いつも通り投げられたと思います」と大江は振り返ったが、渡邉はどのようにして新加入左腕の持ち味を引き出すことができたのか。そこには限られた時間の中でも怠ることがなかった、徹底した準備があった。

「(大江が)ホークスに入ってからの映像と、巨人時代の映像をずっと見ていました。どういう攻め方をしているのか、どういうスタイルのピッチャーなのかを確認しました」

 こう渡邉は明かす。ともに練習する時間はほとんどなかった。だからこそ、大江の過去の映像を確認し、特徴を徹底的にインプットした。ホークスに加入してからの映像はもちろん、在籍期間の長かった巨人時代のピッチングまでを遡り、頭に叩き込んだ。さらに試合前の貴重な時間さえも無駄にはしなかった。

「試合前練習の時間で話をして、どういうところに構えてほしいとか、どういうイメージで投げたいのかは聞いていたので。それを踏まえてリードしました。『なにか違うなと思ったら首を振ってください』と伝えていました」

怠らなかった準備…「渡邉君を信じて」

 この試合の先発マスクは嶺井博希捕手だった。途中出場があるのか、もっと言えば大江とバッテリーを組むことがあるのかさえわからない中でも、捕手としての準備を怠らなかった。この日は5回の代打から出場して、そのまま守備に就いた。大江が投げた8回は、頭に入れていた情報を駆使して、生命線でもあるスライダーやシュートを軸にサインを出した。

 先頭の福永を三振に斬って取ると、廣岡は三ゴロ、西川を一ゴロに仕留めた。「あの打ち取り方が、たぶん大江さんの持ち味だと思います。タイミングをずらしたりして打ち取るタイプだと思うので。きょう受けてみて、イメージはできました」と、確かな手応えを感じた。

 一方で、大江も2学年下の“相方”への感謝を忘れなかった。「とにかくストライク先行で。配球はもう渡邉君に任せて、信じて投げていました。多少逆球とかあったんですけど、それ以外は良かったかなと思います」。後輩のリードに応えられたことに安堵の表情を見せた。

 この日でプロ通算150試合登板という節目を迎えた大江。「あまり意識してないですけど、ここからがスタートだと思うんで、頑張りたいなと思っています」と謙虚に語り、さらなる飛躍を誓った。リードに応えた大江と、「捕手愛」とも言える渡邉の献身的な準備が、“第2のデビュー戦”を最高のものにした。

(飯田航平 / Kohei Iida)