5回途中2失点→3日後に抹消「悔しいとは違う」
「人生で一番の壁ですね。悔しい思いとかはこれまでにもあるんですけど、なんか違うんですよ」
ファーム施設「HAWKSベースボールパーク筑後」で、大津亮介投手は黙々と練習に取り組みながら、偽らざる気持ちを明かした。
今季は開幕からローテーションの最後の1枠を争い、ここまで3試合に登板したが0勝1敗、防御率4.15。勝ち星を挙げることができず、5月14日の西武戦(みずほPayPayドーム)では5回途中2失点で敗戦投手になると、3日後の17日に出場選手登録を抹消された。小久保裕紀監督からは「先発6、7番手の争いからは漏れた」と再調整を指示された。
5月に先発登板した2試合の失点はそれぞれ「0」と「2」。数字だけを見れば厳しい判断にも映るかもしれない。大津はこの現状をどう受け止めているのか。降格を告げられたのは、登板から3日後、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)とのミーティングの場だった。その際に大津は理由を求めた。「何故あそこで代わったのか」――。
5月5日の西武戦(ベルーナドーム)では4回まで無失点に抑えながらも5回のマウンドには立つことができなかった。5月14日の同カード(みずほPayPayドーム)では、同点の5回2死一、三塁のピンチを招いたところで降板。後続が打たれ、自身に黒星がついた。
整理しきれない思い…小久保監督からの返事は
「何故あそこで代わったのか。代えられ方とか、5回以上投げられないことに対してモヤモヤはしていたので。そこは聞きました。監督からは『(まだ)信頼がない』といった返答だったので。もう、今できることをやるだけやって、完璧に抑えられるようにしたいと思っています」
降格を告げられるまでの期間、大津の胸中には整理しきれない思いが渦巻いていた。それは決して、首脳陣の判断に一方的に不満があるからではない。再び1軍の舞台で輝くために、自分に何が足りないのか。それを明確に理解し、次への糧とするために問いかけた。
「知らずにいるのが一番モヤモヤするので。そこはしっかり聞きました。何がダメだったかとか、そういったものを自分から聞かないと、毎回言ってくれるわけではない。聞かなければ自分がモヤモヤするだけなので、それは違うな、と思って。課題を理解した方が、気持ちの入り方も違うので」
抹消が告げられた日のことを「やばいくらい考えました」と振り返る。1年目から中継ぎで46試合に登板し、先発に転向した昨季は7勝をマーク。プロ入り後、初めて直面したとも言える大きな壁。気落ちしなかったわけがない。そんな右腕に声をかけ、心を支えたのが、同日に登録抹消された有原航平投手をはじめとするチームメートの存在だった。
抹消直後に支えた存在「そのおかげで…」
「色々な人が心配してくれました。皆も一緒に悩んでくれて、サポートというか、僕のために考えてくれていたので。そのおかげで、気持ちが切れずにモチベーションが保てているというのは、正直あります」
完全に吹っ切れたわけではないが、立ち止まっているわけにはいかない。首脳陣の“信頼”を勝ち取るためのヒントを日々の練習の中に見出そうとしている。20日、2軍の投手練習で最後まで残っていたのが大津だった。かまぼこ板を用いて、ひたすら直球と“真っチェ”と呼ぶ変化球の回転軸のブレを修正していた。
「僕らは評価される側なので。やっぱり監督の信頼があるかないか、ですよね。やる気は出ています。逆にすごくいい機会だと思っています。自分の実力不足を痛感しましたし、長くプロ野球生活を送るためにも。何事もうまく行くわけがないので、今回のこの経験は自分を見つめ直す期間としてはとてもいいと思っています」
信頼を掴むためには壁にぶつかったままではいられない。課題を明確にして一つずつ潰していく。再び1軍のマウンドで輝く日を目指し、右腕は前向きに歩みを進めている。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)