18日の楽天戦…死球で繋いでサヨナラ勝利を演出
今季、ホークスのサヨナラ勝ちは2回。そのどちらにも意外な? 形で貢献している。「死球って言われますけど、四球と同じですからね。四球だと取り上げるけど、死球は取り上げてくれないですよね!」と語るのは、石塚綜一郎捕手だ。なぜこんなにもデッドボールが多いのか、本人が“ガチ考察”した。ホークスOBでもある杉内俊哉投手コーチを驚愕させたエピソードが明かされた。
18日に行われた楽天戦(みずほPayPayドーム)。延長12回にサヨナラ打を放ったのは牧原大成内野手だった。その直前、石塚は代打で1死一、二塁から打席に立った。カットボールに食らいつきながら、最後は8球目の内角球が右腕を直撃。満塁にチャンスを広げ、劇勝を演出した。ヒーローインタビューで背番号8が「『石塚が決めてくれ』と思っていたんですけど、あいつデッドボール多いので。絶対回ってくると思っていました」と笑顔で語るほどだ。
今季1軍では29打席に立ち4死球。まだ育成選手だった2023年、ファームの非公式戦では33死球を記録した。日本記録が2007年、オリックスのグラッグ・ラロッカ内野手が記録した「28」なのだから、石塚がどれだけ多いのかがわかる。どこに理由があるのか。
「避け方がワンパターンしかない。これ(身を引く)ができない。背中を丸めるというか。前に打ちにいって体重がいくタイプなので」
2024年は2軍で6本塁打を記録するなど、長打力が最大の持ち味。投手のボールに向かっていく中で、自らの体重移動だとうまく避けられない、というのが本人の見解だった。「避けられるような打ち方にしたらおかしくなるし、逃げたら後ろ体重になる。それだと僕のバッティングだとおかしくなっちゃうし、逆にデットボールってありがたいことなので」と解説した。
5月2日のロッテ戦、チームは9回2死満塁から川瀬晃内野手のサヨナラ打で連敗を「5」で止めた。その直前、またしても死球でつないだのが石塚だ。「(相手捕手が)内構えの厳しいところかなと思っていたんですけど、映像を見てみたら外構えの真っすぐでしたね。首も振っていましたし」と苦笑いするが、勝利に貢献したことは間違いない。
通算最多記録保持者は清原和博
「現役選手の誰よりも当たっているんじゃないですか? プロ6年間で。110、120個とか当たっています」。現役選手での最多は、楽天・鈴木大の142死球。通算での最多記録保持者は、あの清原和博が残した「196」だ。そんな中、思い出に残っているシーンを振り返ってくれた。
「僕が入団して2回目のデッドボールなんですけど、2軍の教育リーグで頭にきました。びっくりしました。こんなことあるんだって。確か筑後の中日戦で、真っすぐだったと思います。審判が僕らのところにきて『危険球なんですけど、教育リーグなのでどうしますか』って監督に聞きにきました。『いいよ、いいよ』って小川(一夫2軍)監督が言っていた記憶があります。痛くなかったんですけどね、かすっただけで」
エピソードはこれだけではない。巨人との3軍戦。杉内投手コーチが、ビジターベンチまで訪れたという。「たぶん、データを見たんだと思います。『なんで石塚って選手あんなにデッドボール多いんですか!』って(笑)」。いざ試合が始まると、2死球……。「次の日も杉内さんがベンチに来られて『当たる理由がわかりました』と言っていました」と、通算142勝の大左腕すら驚かせたのだ。
死球で骨にヒビが入ったが、3週間で復帰したこともある。丈夫な体に育ててくれた家族に「ありがとう」と、照れ笑いで感謝の言葉を口にした。チームメートから「めっちゃ『マグネット』『磁石』って言われます。誰とかじゃないです、本当にみんなから」。プロ野球選手は体が資本。怪我だけは気をつけて、これからもチームの勝利を引き寄せる。
(竹村岳 / Gaku Takemura)