国指定難病、浜口遥大が語った真相 手術までの葛藤…“希望”をくれたLINEグループ

浜口遥大【写真:竹村岳】
浜口遥大【写真:竹村岳】

「コンディションを整えればどうにかなると」

 もう1度ユニホームを着て、新たな一歩を踏み出した。浜口遥大投手が15日、ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で、リハビリ活動を再開させた。4月16日に左肘関節クリーニング術を終えると、23日には「黄色靭帯骨化症」を発症し、それに伴い「内視鏡下胸椎黄色靭帯骨化切除術」を受けたことが発表された。

 黄色靭帯骨化症は脊髄の後ろにある黄色靱帯が骨化することで、神経を圧迫し、足の痺れなどが症状として出る。原因がはっきりと特定されておらず、国の難病に指定されている。どんなふうに違和感を抱いて、受診に至ったのか。浜口本人の口から、真相が語られた。

「自分の感覚的には投球に影響していないと思っていたし、コンディションを整えればどうにかなると思っていたんです。ホークスに移籍して、パフォーマンスが上がってこなかった。肘のこともありましたし、ずっとタイミングを探していた感じ。いろんなことが重なりました」

 実は背中の小さな痛みは数年前から感じていたという。毎年MRIを撮る中で「モノがあるのはわかっていて、それがちょっとずつ大きくなっていた。背中も固くなっていたんですけど、勤続疲労もあるし。年齢を重ねた影響だと思っていたんです」と、黄色靭帯骨化症という認識はしていなかった。今年2月の春季キャンプ時点では「神経を圧迫しているんじゃないかという話はありました。日常生活に支障は出ていないからこそ、手術をするなら早い方がいい、と」。はっきりと病名を受け入れた瞬間だった。

トレードで移籍して1年目…複雑だった2月の胸中

 トレードで移籍して1年目。リハビリに踏み切らなければならない現実と、アピールしたい気持ちの間で葛藤を抱いた。「最後の最後までそれがありました。それによってパフォーマンスが落ちているとも思っていなかったですし、投げられるしな……って。投げてみて、実際こうなっています、感覚はどうですか、僕は投げられると思います、っていうのがけっこうありました」。トレーナーとの会話が欠かせない毎日。野球におけるプレーはもちろん、自分の人生のために、メスを入れる決断をくだした。

「猶予がある立場ではなくて、そこは本当に難しかった。ドクターやトレーナーさんと話をしている段階では『早い方がいいんじゃない』とは言ってもらっていたんですけど、僕の立場も理解してもらっていました。できるだけ、やれると思うところまでやりたいですという話を重ねていました。本当に、いろんなタイミングがあったんです」

リハビリを再開した浜口遥大【写真:竹村岳】
リハビリを再開した浜口遥大【写真:竹村岳】

 本人いわく、早期発見という段階だった。「骨を圧迫していたんですけど、小さくはないんですけどまだ間に合うところだった」という。症状は本当に人それぞれで「進んでしまうと、どうしても切る場所の範囲が大きくなってリハビリに時間がかかります。僕はクリーニング手術みたいな感じでした。そんなに大きく、損傷させることもなかったので」。

DeNA時代のチームメート・三嶋一輝に相談

 DeNA時代のチームメート、三嶋一輝投手も2022年に黄色靭帯骨化症を発症した。右腕は、浜口が背中に違和感を抱いていることを“知っていた”といい「僕もあるっぽいんですよねみたいな話はしていました。三嶋さんも頑張ってプレーを続けて、実際腰とかも痛くなったり……。そういう話も聞いていたので。『結局、今回オペすることになりました』と連絡はしました」。体から不安を取り除けば、必ずパフォーマンスにいい影響を与える。先輩からも「必ず改善されるから」と、背中を押してもらった。

 三嶋を含め中日の福敬登投手、阪神の湯浅京己投手ら、黄色靭帯骨化症を経験したプレーヤーが所属するLINEグループがあるという。どんなトレーニングが有効か、体に表れた症状……。細かく情報を共有することで、ともに復帰を目指しているのだ。浜口はまだ入っていないが「僕の場合は、他の3人に比べて症状が軽いし、リハビリが始まったばかり。練習の強度が上がって、キツくなると張りが出てくる。背中が硬くなるといろんなコンディションが崩れやすくなるとは言われました。いろいろ相談はしようかなと」。力を借りながら、一歩ずつ1軍のマウンドに向かっていく。

 復帰を待っているファンが、きっとたくさんいる。メッセージをお願いすると「トレードできて、戦力になれていないので。なんとかシーズン後半、9月を目指してリハビリしていくので。チーム状況にもよりますけど、そこで戦力になりたいと思って、リハビリを頑張っていきます」と小さく頷いた。熱い気持ちは絶対に失わない。支えてくれる存在を大切にして、必ずマウンドに帰ってくる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)