サヨナラ打に笑顔なし…牧原大成が押し殺した感情 盟友・中村晃が絶賛した姿

サヨナラ打を放った牧原大成【写真:古川剛伊】
サヨナラ打を放った牧原大成【写真:古川剛伊】

歓喜の輪でもみくちゃにされても笑わなかった

 ピンク色に染まった本拠地のど真ん中。ファンを歓喜へと導いた男に、笑顔はなかった。笑ってはいけない。そう感じているようにさえ見えた。ソフトバンクは18日、楽天戦(みずほPayPayドーム)に2-1でサヨナラ勝利。延長12回1死満塁、試合を決めたのは牧原大成内野手だった。押し殺した感情、そして盟友でもある中村晃外野手が絶賛した姿とは――。

 先発の上沢直之投手が8回無失点の好投。打線は5回に犠飛で奪った1点を守り抜き、9回に突入した。しかしロベルト・オスナ投手が同点とされ、試合は延長戦へ。負けはなくなった12回、2四球と死球で満塁として牧原大だ。西垣が投じた初球のフォークを振り抜くと、打球は右前に弾んで決着。「やられている球でくると思ったので、それだけ狙っていきました。とりあえず思いっきり仕掛ける、気持ちだけ。あとは運に任せました」と汗を拭った。

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 二塁周辺で、歓喜の輪ができた。牧原大は、ただ拳を高く突き上げるだけ。チームメートの方が笑い、勝利を喜んでいた。なぜ笑顔がなかったのか。その理由も、背番号8らしかった。

「悔しさしかなかったですね。最近の試合で打てなかったので」

 5月13日の西武戦(京セラドーム)以来の安打。無安打は4試合も続き、この日の最後の場面も3打数ノーヒットで迎えていた。一時は3割を超えていたが、打率.278に。十分だとも思える数字だが、自分自身への不甲斐なさがそれを許さない。サヨナラ勝ちを決め、目頭を熱くしているようにも見えた。「打てない悔しさが爆発した感じでした」と、安堵した表情で語った。

 劇打を放ったのは、もはや代名詞とも言えるような初球打ちだった。無安打が続いた中でも、積極性は絶対に忘れない。「最後、負けはもうなかったので。打てていない時だからこそ、思い切っていきました」と結果につなげた。何度も口にする悔しさについても「やることをやって打てていなかったので、そこは腐らず。打てていない時は守備で絶対になんとかしてやろうって気持ちでずっとやっていました」と胸を張る。

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 0-0の3回一、二塁。二塁の守備でもビッグプレーを見せた。辰巳が放った痛烈な打球に横っ飛び。必死のプレーで一塁をアウトにし、先制点を与えなかった。「ピンチの時だからこそ投手を救ってあげたいと常に思っている。それがきょうはうまくいってよかったと思います。やっぱり自分は守備がなくなったらチームにはいられない。練習から意識してやっているので、試合で出せてよかった」と納得のプレーだった。

ピンクフルデーでビジョンに映る「チームメートの推しポイント」

 この3連戦は「ピンクフルデー」として行われた。普段とは別のユニホームを着用するなど新鮮な雰囲気で、演出にも違いがあった。打順が回ってくるたび、ビジョンに映し出されていたのは「チームメートの推しポイント」だ。個性あふれる答えの中で「牧原大選手の守備」を挙げていたのが、中村だった。

中村晃の「チームメートへの推しポイント」【写真:古川剛伊】
中村晃の「チームメートへの推しポイント」【写真:古川剛伊】

「思いついたからだと思います」と背番号7は照れ笑いで理由を語る。その上で、牧原大が見せたファインプレーには「ポジショニングもめちゃくちゃ考えてやっているし、セカンドというポジションにはやっぱり特別な思いがあると思います」と大絶賛だった。一塁手としてゴールデン・グラブ賞を4度、獲得した。多くの二塁手を目にしてきたが「一番うまいんじゃないですか? 肩も強いですし。マッキーがいると安心感はやっぱりありますよ」と続けた。

 周東佑京内野手が離脱した時は、外野守備も解禁した。首脳陣も、32歳の存在に信頼を寄せ、心から頼りにしている。「チームで主力はいない中でも『今いるメンバーが最高』だと、(小久保裕紀)監督にも言っていただいている。その言葉を信じて、僕らは死に物狂いで、必死にやるだけです」と、また表情を引き締めた。試合後、囲み取材に応じたユニホームは泥まみれだった。何度だって立ち上がるから、牧原大成は強い。

(竹村岳 / Gaku Takemura)