王会長まで呈した苦言 「落とせない」一戦で見せたエースの姿…立ち上がりに覗いた“異変”

有原航平【写真:古川剛伊】
有原航平【写真:古川剛伊】

5月は3試合連続で初回に失点…右腕も「反省」

 ハッキリと苦言を呈した。珍しい姿だった。ソフトバンクは16日、楽天戦(みずほPayPayドーム)に1-5で敗戦した。先発した有原航平投手が6回5失点と試合を作れずに、4敗目を喫した。「彼が本来の姿にならないと、(日本)ハムを追いかけるのは難しい」と小久保裕紀監督は言い切った。「落とせない」と語ったこの一戦の意味を、有原は結果で表現できなかった。

 序盤からリードを許した。初回、先頭の村林に中前打を許し、辰己に左翼テラスに2ランを運ばれた。そこから4回までは動かず進んだが、5回には3連打で追加点を献上。6回には堀内に2ランを浴び、一気に試合は決まった。普段なら敗戦後も淡々と取材に応じる小久保監督だが、この日は1度、悔しそうに帽子を深く被り直していた。

 開幕投手も託された背番号17だが、ここまで8試合に登板して2勝4敗。防御率4.50と苦しむ姿に、口を開いたのは王貞治球団会長だ。

「立ち上がりが良くないよな」。今季8度の登板は全て金曜日。3月&4月の5試合では初回を無失点に抑えていたが、5月は3試合連続で失点。昨シーズン、有原自身も課題を抱いていた部分だが、思わず指摘したくなった。そして王会長は「でもたった2点だよ。まだそこから9回あるわけだから」と、1得点に終わった打線にも言及した。

 小久保監督が取材に応じるのは「試合後」、そして「カード初戦の試合前」。この日から楽天戦で、午後3時過ぎに囲み取材で口を開いた。39試合を消化して18勝19敗2分けというチーム状況を踏まえて「星取りというよりも、ローテーションをどう組んでいくか。きょうは有原だから落とせないし、だから有原と(リバン・)モイネロをカードの頭に置いている」と言った。3連戦を勝ち越すために、好投手を初戦に持ってきている。勝率5割復帰のためにも、指揮官にとっては「落とせない」一戦だったのだ。

試合前から語っていたこの試合の意味

 就任2年目の小久保監督は、2年連続で有原に開幕投手を託した。2024年は14勝を挙げて最多勝のタイトルを獲得。182回2/3を消化し、指揮官も「この分業制が確立された時代で180イニング以上、1試合平均7イニングっていうのは、すごい数字だと思いますね」と信頼を寄せていた。リーグ優勝を飾り、11月には今季も開幕マウンドを任せることを明言。今年2月の春季キャンプではS組に選出し、調整も一任した。

 5月2日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)では、初回からポランコに先制3ランを許した。敗れれば今季最長の6連敗となる一戦。結果的に川瀬晃内野手のサヨナラ打で白星を拾ったが、小久保監督は「今の状況では正直3点のビハインドは非常に重たかったので。みんなが救われた、そういう勝利だったんじゃないかなと思います。ただ、投手戦に持ち込まない限りはなかなか厳しいチーム状況なので。勝ちはしましたけど、素直に喜んでられる状況ではないですね」と話していた。

「とにかくチームの中心という選手が引っ張らない限りは、上位に食らいつくのは難しいです」。有原が結果を残してきたのだから当然だが、小久保監督がここまでハッキリと苦言を呈するのはなかなかない。柳田悠岐外野手、近藤健介外野手、周東佑京内野手らレギュラークラスを欠いているチーム状況。「経験の浅い選手が頑張っているし、やっぱり中心の投手が作っていく。そこだと思います」と厳しく続けた。

指揮官も言及…被打率.291「この世界は結果」

 今季52イニングを消化して、許したヒットは57本。先週の登板を終えたところでは、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は「元々、開幕から状態が悪いと思っていませんでした。むしろ、良いとさえ思っている」と話していたが、この日を終えて被打率.291だ。指揮官も「ヒットは打たれている。ランナーを出してから粘るのはスタイルですけど、この世界は結果なので」と突きつけた。

 右腕は「この結果なので……。反省して、こういうことがないようにできることをやるだけ。(5回の)3点目も自分の守備で防げる点だったので、反省してやっていかないといけない」と振り返った。繰り返したのは反省という言葉。必ず復調すると、信じて待つ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)