牧原大成に“第3ポジション”の可能性 主力が復帰して以降…首脳陣が語った新たなプラン

二塁を守る牧原大成【写真;古川剛伊】
二塁を守る牧原大成【写真;古川剛伊】

4月18日の西武戦で2年ぶりに中堅守備に就いた

 かつて「ジョーカー」と呼ばれた男に、第3の可能性が浮上した。ソフトバンクの牧原大成内野手はここまで32試合に出場して打率.316、0本塁打、10打点。四球は「1」と、積極性を武器にして、見事に結果へと繋げている。そんなベテランの打撃面を存分に生かすために、首脳陣が「新たなポジション」の可能性について言及した。

 2023年オフ、2軍監督から昇格する形で小久保裕紀監督が指揮を執ることになった。選手それぞれとも会話を重ねながら方針を固めていく中、牧原大とも個別に面談を行った。二塁で勝負したい思いを直接伝えると、その言葉通り、2024年シーズンで守備に就いたのはセカンドだけ。並々ならぬ思いで、レギュラーを奪い取ろうとしていた。

 そんな牧原大に、外野守備が“解禁”されたのが今季4月18日の西武戦(ベルーナドーム)だった。周東佑京内野手が左膝の違和感が覚えたことを受け、「8番・中堅」でスタメン起用を託された。センターを守ったのは2023年8月30日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)以来だ。守備において、とことんまでこだわり抜く男。首脳陣との間で、どのようなやりとりが行われたのか。大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチが明かした。

「センターは緒方(理貢)もいるし、(佐藤)直樹もできる。その中で牧原大のバッティングの良さをどうしてもスタートの中に入れたかった。キャンプ中から外野で打球捕もやっているし、オプションの中にはあったので。普通でいったら、周東が故障せんかったら誰かがそこ(センター)に入ることなんてない。でも現状こうなってしまったから“プランB”に移行したということです」

 西武戦の試合前、大西コーチから「センターいくよ」と伝えられた牧原大は「守備位置(ポジショニング)だけ、教えてくださいね!」と力強く答えた。緊急事態を救ってくれた存在。「試合に出るためならどこでもやるってタイプの選手。失敗したらそこで使っている俺らの責任なんだから。思い切ってやってほしい、それしかなかったよ」と、改めて厚い信頼を寄せる出来事にもなった。

大西&奈良原コーチが語った今後の起用とは?

 2022年には二塁で41試合、外野で64試合に起用された。多様な役割をこなすことから、藤本博史前監督からは「ジョーカー」とも呼ばれた。大西コーチも「練習を見ていても、うまいですよ。送球もいいし、そのまま外野におってもいいと思えるくらい」と絶賛だ。俊足に送球の正確性、何より経験値がある。牧原大を生かすための新たなプランが、左翼だ。大西コーチは、こう続けた。

「選択としてはセカンドと外野。周東が帰ってきたら内野に戻る可能性もあるし、レフトだってあるかもしれない。オプションとしてはめちゃくちゃありがたい存在です」

中堅を守る牧原大成【写真:古川剛伊】
中堅を守る牧原大成【写真:古川剛伊】

 レフトでの出場は、2021年9月25日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)までさかのぼる。可能性について奈良原浩ヘッドコーチは「その時の状況にもよるかな。今の時点でどうこうは言えないけど」とした上で「(主力が)戻ってくるけど、その人たちの状態にもよるから。休ませないといけないのか、途中で代えないといけないのか。そこですよね。もしイレギュラーなことがあった場合、可能性としてはあるかもしれない」と“第3のポジション”での起用も否定はしなかった。

ふくらんできたのは主力が復帰して以降の起用

 首脳陣2人に共通するのは、牧原大の打撃面を生かしたいという思い。打率.316を残しているように、奈良原コーチは「今の打線の中ではちょっと外せないかな。プラス、セカンドの守備もあるからね。やっぱり(失点を)防いでくれるし、球際の強さも出ている。これを続けてくれたらすごく頼りになりますね」と話した。さまざまな起用に応えられるだけの技術があるからこそ、今の背番号8は絶対に欠かせない。

 近藤健介外野手ら、実戦復帰が見えてきた選手もいる。奈良原コーチは「レギュラーが帰ってきたから明け渡しますっていうのじゃなくて、そのまま取ってしまえって気持ちでやってもらわないと困る。誰かが戻ってきたから動かすんじゃなくて。(野村)勇や(佐藤)直樹、笹川(吉康)も、『それでも使いたい』と。若くして出ている選手はチャンスなんだから」と言及した。主力たちの復帰に備えながら、首脳陣も新たな可能性を探している。

(竹村岳 / Gaku Takemura)