2打席連続弾含む3安打7打点の大暴れ
7打点の大活躍でも浮かれることはなかった。その背中に、若手たちは“ベテランの矜持”を見た。11日のオリックス戦(京セラドーム)で、嶺井博希捕手が神がかり的な活躍を披露した。2打席連続本塁打を含む3安打で、チームの全7得点を一人で叩き出す大暴れ。守っては先発の上沢直之投手を巧みにリードして8回1失点の好投を引き出し、攻守にわたってチームを勝利へ導いた。まさに“嶺井デー”と呼ぶにふさわしい試合だった。
「いい結果になってよかったなと思います。こういうことは2度とないと思います。しっかり練習したいです」。控えめに語り、謙虚さを崩さない嶺井。本塁打についても、「甘いボールをしっかり、自分のポイントで打つだけです」と、シンプルな言葉で振り返った。
ベテラン捕手の活躍に、ベンチはお祭り騒ぎ。それでも、その中心にいた嶺井は打撃の余韻に浸ることなく、すぐに試合へと気持ちを切り替えていた。「特にバッティングのことについては、話していませんでした」。本塁打直後の様子を間近で見た若手選手の目にも、その姿勢は強く映っていた。
ベンチで嶺井の真後ろに座っていたドラフト2位ルーキーの庄子雄大内野手は「(ベンチに帰ってきて)その次の回の守備のことを話していました。バッティングを振り返ることは、嶺井さんの中ではしていたかもしれないですけど、特に何か言葉を発したりとかはしていなかったです。すぐに切り替えて、次の守備のことに集中していたのが印象的でした」と語る。
「みんな『きょうは嶺井さんの日や』って感じで盛り上がっていましたけど」と振り返る一方で、次のイニングに備える「12番」の背中があった。
庄子が見た姿は、嶺井本人の「上沢とどうやって最少失点で切り抜けるか、それだけを考えていました」という言葉と重なる。打席での結果に一喜一憂することなく、すぐに捕手としての役割に頭を切り替える。その姿勢こそが、上沢の快投を引き出す大きな要因だったに違いない。
チームメートに慕われる「めっちゃいい人」
攻守でチームを支え、明るい雰囲気をもたらすベテランの姿勢は、若手たちにとっても学ぶべき手本だ。「バッティングだけじゃなく、チームを盛り上げられるような、守備だったり走塁ができればなと思います」と、庄子は目を輝かせる。
庄司の隣に座っていた2年目の廣瀬隆太内野手も「嶺井さんが打つと盛り上がりますね」と笑顔。「嬉しいです。嶺井さんって“愛されキャラ”じゃないですか。めっちゃいい人なんで」と、33歳の人柄を慕う声は絶えない。
「自分の役割は、先発投手と一緒にゲームを作って勝つ確率を上げること。どんな投手がくるかわからないですけど、しっかりと準備したいです」
どこまでも謙虚に語る嶺井。その姿勢こそがチームを勝利へ導く。ムードメーカーでありながら、実直で責任感に満ちた存在。ベテランの背中が今のホークスにとってどれほど大きな影響を与えているのか――。この日の試合が、それを示していた。
(飯田航平 / Kohei Iida)