【連載・前田悠伍】実戦離れた1か月で何があった? 「耐えられなかった」…“10倍”の負荷

前田悠伍【写真:冨田成美】
前田悠伍【写真:冨田成美】

5月7日に実戦復帰…プロ入り後最速の148キロを計測

 人気企画「鷹フルシーズン連載~極談~」。前田悠伍投手の5月前編です。4月11日から5月7日まで、実戦登板から遠ざかった左腕。昨年とも比較して“10倍”の練習量が、大きな理由となっていました。「まだまだ自分のレベルでは無理だと思った」。徹底的にフィジカルと向き合った1か月、どのような進化を遂げたのでしょうか?(次回は11日に掲載予定)

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 4月11日のオリックス戦(京セラ)で4回4失点。最速は144キロ、4度の空振りのうち直球で奪ったのは1度だけだった。「後半の方は球速も落ちていたので。出力をキープする体力も絶対に必要だと思いました」。5月7日の広島戦(タマスタ筑後)で実戦復帰を果たすまで、見つめ直したのは体作りだった。まだまだ高卒2年目の19歳。知らず知らずの間に、疲れも溜まってしまっていたという。

「自分的にはずっと高校から同じ感じでやっている。疲労もないと思っていたんですけど、トレーナーさんに触ってもらったらやっぱり張っているなと。それならウエートやフィジカル、投げる技術面にフォーカスした方が先に繋がるかなって。自分もそう思ったので」

 2023年のドラフト会議で1位指名を受けた。1年目の昨シーズンは、ウエスタン・リーグで4勝1敗1セーブ、防御率1.94。堂々の成績を残し、2年目は開幕ローテーションを目標として、2月の春季キャンプに飛び込んだ。明確な“差”が生まれ始めたのは、この時からだ。

「去年のキャンプはほとんど投げていない。100球いかないくらいしか投げていなかったんですけど、今年はたぶん、トータルで1000球くらい投げていた。そこで去年との差が生まれていて、中6日ってなると球数が去年よりもどうしても多くなっていたので、そこに耐えられていなかったので、そういう疲労が出たのかなと思います」

 昨年2月は、あくまでも体作りが優先だった。しかし、今年は競争を勝ち抜くためにも初日からブルペン入り。アピールするために投げ続け、およそ“10倍”の練習量をこなしていた。3月14日に開幕したウエスタン・リーグでも中6日でローテーションを守り「疲れがあった状態で投げていたので。その状態で投げられないといけないんですけど、まだまだそういう体力がなかった」。体は正直で、コンディションは少しずつ投げるボールにも表れていた。

前田悠伍【写真:竹村岳】
前田悠伍【写真:竹村岳】

体に現れた明らかな変化「濃いトレーニング」

 試合から遠ざかった1か月。どんな過ごし方をしていたのか。ひと回り大きくなった体つきで、充実の表情を見せた。

「自分の時間があったので、みっちりできました。毎日濃いトレーニングができましたし、1日たりとも無駄にしていなかったと思います。朝から先にウエートを終わらせて、練習はいくらでもできるような流れにしていました。とにかくウエートでもう1回、基盤を作る。技術練習で、どこが悪いからロスしているのか。そこを徹底的に見つめ直していました」

 ひたすらフィジカルと向き合った期間で、新たな発見もあった。これまでの人生で、投球後に「下半身が張ったことがなかった」という。意外な過去について「他の人は『下半身きてるわ』『ケツやばいわ』とか言っていて、そうなった方がいいのはわかっていたんですけど。自分はどうしても上半身に張りがきていた。それを考えた時に、やっぱり骨盤周りが使えていない。腕を振るだけで頑張っていたので、改めてフォームごと変えないといけないなと思いました」と明かした。

「もちろん1軍で投げないといけないけど…」

 肩や首の筋肉が張るのは、そこを使って投球してしまっているから。下半身を生かした理想的なフォームを追い求め、練習方法から見つめ直した。「タンパク質を意識して摂るようにして、食べる回数も増やして、お腹が空いたなって時間がないようにしていました」と食生活も改善したことで、筋肉量は2キロ増加。フィジカルにおいて進化を遂げたとともに、「今後を見据える」とはどういうことなのか、考えさせられる期間でもあった。

「もちろん1軍で投げないといけないって思いはありますけど、まだまだ今のレベルでは無理だと自分の中でも思った。そういう気持ち(1軍で投げたい)がないと、終わりだと思っている。そこに向けて、まだまだやるべきことがたくさんあるかなと」。目先の結果も追い求めたいところだが、目標はスケールの大きな投手になること。1度足を止めたことで、たくさんの学びを得た1か月だった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)