周東の言葉から浮かぶ「ホークスらしさ」とは
右腓骨を骨折し、戦列を離れている周東佑京内野手。現在は筑後のファーム施設でリハビリを続けているが、その表情は明るい。「骨折といっても、ひびが入って欠けているだけなので」。打つ、投げるという動作に関しては問題はないといい、「今はコンさん(近藤健介外野手)より早く戻るのが目標ですね」と、1軍への復帰時期を5月下旬に定めている。
思い返してみれば、選手会長の明るい振る舞いはリハビリ組に移ってから始まったことではない。チームに負けが込んだ時期も、自身が試合に出られなかった際にも笑顔は見えていた。試合前練習では積極的に若手選手に話しかけ、チームが得点したりピンチをしのいだりした際には、屈託のない表情を浮かべていた。
もちろん、心中は忸怩たる思いが溢れていたはずだ。それでもなぜ深刻な表情を見せることがなかったのか。周東の言葉から浮かび上がってきたのは、相次いで無念の離脱を余儀なくされた先輩への思い。大切にする「ホークスらしさ」とは――。
「これだけ(主力が)抜けて、今いるメンバーが暗くやっていても……。それこそリハの(年齢が)上の人たちを焦らせるわけにもいかないので。僕らは普通に、いつも通りやって。勝つ、負けるは勝負の世界だからしょうがないですけど。そんなに暗くならずにやっていけばいいのかなとは思っていました」
自身も万全ではない中で意識した“あるべき振る舞い”
柳田悠岐外野手や近藤健介外野手は、言わずもがな自身が離脱したことへの責任を感じている。暗い雰囲気でプレーをすれば、その感情をより強めることになる。「早く戻らなければ」との思いを抱かせることなく、しっかりと治してもらうことがチームにとって最も重要――。周東自身も開幕前から左ひざの状態が万全ではない中、選手会長として“あるべき振る舞い”を意識していた。
目線を向けるのは先輩に対してだけではない。「どうしてもこれだけ若い選手が試合に出て。結果が出なかったり、チームがあれだけ負けたりしていたら、やっぱり『どうしよう、どうしよう』ってなると思うので。そこはあまり気にしないでプレーしてもらえるように自分がやるだけとは思っていましたね」。
そう口にするのは自身の経験があるからだ。「僕も先輩方に色々と言葉をかけてもらって、そういう人たちの振る舞いをずっと見ながらやってきたので。それがホークスのいいところでもあると思うし、それがなくなったらどんどんチームが弱くなるんじゃないのかなと。だから僕とクリ(栗原陵矢内野手)がそういうサポートをしっかりやって、(背中を)見せていかないといけないのかなと思います」。
連勝にも驚きなし「普通にやっていたな、くらいです」
自身が離脱した4月29日以降、チームは連敗を重ねたが、5月2日のロッテ戦から息を吹き返して5連勝を飾った。「全部の試合は見ることができていないですけど、時間がある限りは見るようにしています」という周東。少しはホッとしたのかと問うと、意外な言葉が返ってきた。
「いやいやいや。普通にやっていれば普通に勝てると思いますよ。若手でもやっぱりポテンシャルの高い選手が多いので。あとは焦らないというところだけかなと。『(連勝中は)普通にやっていたな』くらいにしか感じてないです」
ホークスの強さは誰よりも感じているし、信じている。周東佑京という大黒柱が前を向けば、チームの目線も自然と上がる。「大丈夫だから」――。先輩にも、そして後輩にも言葉ではなく“姿”で思いを示している。