中村晃を笑わせろ…“あの先輩”から突然の指令 石塚綜一郎、まさかの顔芸「城之内」

中村晃にモノマネを披露する石塚綜一郎【写真:竹村岳】
中村晃にモノマネを披露する石塚綜一郎【写真:竹村岳】

先輩が城之内モノマネの元祖「受け継いだつもりは…」

 先輩からの「指令」を受けた石塚綜一郎捕手は、ここぞとばかりに顎をクッと突き出した。スマホの画面と後輩の顔を見比べた中村晃外野手は“世代”だったのか、こらえきれずに笑みをこぼした。石塚が“顔マネ”を披露したのは、大人気漫画「遊☆戯☆王」に登場する城之内克也というキャラクター。「あのタイミングでよく撮っていましたね」。記者が撮影した写真を見た石塚はニヤリと笑った。

 チームが3連敗中で迎えた4月30日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。試合前練習に向けたナインがそれぞれ体を温めている時だった。「普通にアップしていたら『見せてこい』って言われました」とスマートフォンを手渡された。ムチャ振りの“仕掛け人”は、イタズラ好きの「あの先輩」だった。

“悪ふざけ”が意図ではないことはすぐにわかった。主力がこぞって戦列を離れたチームは苦しい戦いを強いられ、自身のノーヒットが6打席続いていた。今できることは何か--。その答えが全力の「顔芸」だった。

「牧原さんに『これと同じ顔をして、(中村)晃さんに見せてこい』って言われたので。ちゃんと顔を作って、マネしました」。牧原大成内野手は、岡本正靖1軍ストレングス&コンディショニングから借りたスマホを石塚綜一郎捕手に託してきた。「最高じゃないですか。晃さんの笑顔を引き出したんですから」。指令を100点満点でこなした23歳はしたり顔だ。

3日のロッテ戦でお立ち台に選ばれた石塚綜一郎、大関友久、牧原大成(左から)【写真:古川剛伊】
3日のロッテ戦でお立ち台に選ばれた石塚綜一郎、大関友久、牧原大成(左から)【写真:古川剛伊】

作品も知らずカードゲームも「やったことはない」

 城之内というキャラクターを知らなかったという石塚。「椎野さんが元々マネしていたんですよね。それを見ていて『僕も似ているな』みたいな。受け継いだつもりはないんですけど、2軍でも岩井(俊介投手)とかにちょこちょこ言われていました」。“元祖”は椎野新4軍担当兼4軍サブマネジャーだったそう。見よう見まねでのチャレンジだった。

 2001年世代の同学年でもある岩井は「あいつめっちゃ似ていますよね。特にイジりやすいです」と石塚を称する。「(学生時代は)全然そんなキャラじゃなかったんですけどね。この世界に入ってきてからです」。新たな“キャラ”を演じるのは、石塚なりの思いがある。

「僕から発信できることは少ないかもしれないので、逆にイジってもらった方がいいかもしれないです。そういうところでも力になれたら、チームの一員だと思うので。それで盛り上がってくれたらいいです」

 5月3日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。自身5試合ぶりにスタメン起用された石塚は、2点リードの6回2死一、二塁で中越えに2点二塁打を放った。12打席ぶりの安打で今季初打点をマークし、胸を撫で下ろした。プロ野球選手として当然、盛り上げ役だけでは終わらない。自らのバットでチームメートをより笑顔にしてみせる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)