【連載・栗原陵矢②】改めて語る長崎の激突 襲われた恐怖も…周東と“共鳴”する思い

激突の代償と、揺るがぬ信念

 人気企画「鷹フルシーズン連載~極談~」。栗原陵矢内野手の2回目は、開幕から出遅れるきっかけとなった右脇腹痛について、胸中を赤裸々に語ってもらいました。28歳を襲った“未知の恐怖”。それでもハッキリと口にした覚悟とは。「何があっても変わらないです」――。

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 プロ11年目を迎えた2025年シーズン。始まりは予想すらしていなかった形だった。3月11日、巨人とのオープン戦(長崎)。三塁を守る栗原がフェンス際へのファウルフライに身を挺した瞬間、衝突とともにグラウンドに倒れ込んだ。その代償は大きく、開幕1軍に名を連ねることができなかった。1軍復帰は4月17日の楽天戦(みずほPayPayドーム)。開幕から16試合目での合流となった。

巨人とのオープン戦で負傷した栗原陵矢【写真:冨田成美】
巨人とのオープン戦で負傷した栗原陵矢【写真:冨田成美】

「正直、ヤバいと思いました」。激突の瞬間、栗原の身に襲い掛かったのは経験したことのない痛みだった。「脇腹は初めてだったので……。どうなるんだろうって」。古傷の左膝にも衝撃はあったが、それ以上の不安が28歳の胸を締め付けた。

 結果的にシーズン開幕には間に合わなかったものの、あのプレーに対する後悔はない。ともに未来のホークスを担う周東佑京内野手は、栗原が見せたプレーの“価値”をこう語る。「そこで手を抜く選手は試合には出られないと思います。『無理するところじゃない』って思われるかもしれないけど、チームでやっているわけですから」。

 アウト1つに向き合えない選手はグラウンドに立つべきではない――。選手会長としての思いが詰まった言葉だった。副選手会長でもある栗原自身にとっても、その覚悟は同じだ。怪我の恐怖を知った今でも、力強く言い切る。

「復帰戦だろうが、ああいう打球が来たら一緒のことをやっていたと思います。1つのアウトを必死に取るっていうのは、何があっても変わらないです。野球をやる以上、何かにビビってやることはないです。それは今後も」

ファームで若手と共に汗を流す栗原陵矢【写真:川村虎大】
ファームで若手と共に汗を流す栗原陵矢【写真:川村虎大】

小久保監督と共有する目標「3割30本」

 栗原の野球に対する真摯な姿勢は、リハビリ期間を過ごした3軍のグラウンドでも見られた。本来なら主力がいるはずのない場所で若手選手らとともに汗を流し、ボール拾いなどの“雑用”も進んで行う姿があった。

「意識的にボール拾おうとか別に思わないですし、ボールが落ちてたので拾うぐらいすかね。それはどんだけ野球がうまかろうが、1軍でやろうが、全然関係ないことなので」

 当たり前のことを、誰よりも愚直に――。その姿は若鷹の手本にもなり、首脳陣の目にも次世代を引っ張るリーダーとして映っている。もちろん、かかる期待は大きい。小久保裕紀監督とは開幕前から「打率3割、30本塁打」という高い目標を共有していた。

「毎打席打ちたいですけど、相手ピッチャーも野手もいることなので。結果はわからないこと。だから、自分ができることをゲームで100%出せる準備をする。今はそれだけしかできないので。まだまだ上げていかないといけないし、もっともっといい数字を残さないと」

 開幕から波に乗れなかったチームを見れば、栗原不在の影響は少なからずあったことは間違いない。現在も柳田悠岐外野手や近藤健介外野手、そして周東ら多くの主力が離脱する苦しい状況ではあるが、リーダーとして一皮剥けるための期間であるともいえる。苦しんだ春を乗り越え、まだまだシーズンは始まったばかり。その背中でチームを引っ張っていく。

(飯田航平 / Kohei Iida)