「なんでいつも通りできない…」廣瀬隆太が失った感覚 3日間の“親子試合”で見つけた答え

タマスタ筑後で汗を流す廣瀬隆太【写真:竹村岳】
タマスタ筑後で汗を流す廣瀬隆太【写真:竹村岳】

エラーで固まった1歩目「前に出られない」

 頭にこびりついていた疑問が解決した。廣瀬隆太内野手が、3日間にわたった“親子試合”を終え、苦悩と気付きを口にした。仙台で行われた4月27日の楽天戦では失策を記録。休養日を挟み、迎えた29日は日本ハムとのナイターだったが、24歳の姿は朝早くから筑後にあった。

 2軍戦に出場した後、1軍戦に参加することから名づけられた「親子試合」。ハードなスケジュールは3日間続いた。4月29日から5月1日までタマスタ筑後で行われたウエスタン・阪神戦はいずれも午後1時プレーボール。全体のウオーミングアップが午前9時から始まった。試合途中で交代すると、午後6時から始まる1軍の試合に向け、みずほPayPayドームまで自ら車を走らせる。ナイターが終われば、翌日の2軍戦に備えるために、筑後の寮へと1時間ほどかけて戻った。

「きつかったですけど……」と率直な思いをこぼすが、明るい光も見えた。これまで1軍では19試合に出場し、エラーは3つ記録している。普段は堂々とした振る舞いを見せる24歳だが、心の中は「なんでいつも通りできないんだろう」だった。しかし、この3日間で、ようやくその答えが見つかった。

「1軍でエラーして、体が固まっていた部分がありました。2軍に行ったら『あ、俺ってこういう感じで守ってたな』って。メンタル的なところを思い出したんです」

 1軍での失策が、無意識のうちに自身の体を硬直させていた。「エラーしてからは、前に出られなくなったり、1歩目が鈍ったりしていたので。なんでいつも通りできないんだろうって、ずっと思っていたんです」と、自問自答する日々だったことを明かした。

 5月1日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)の5回には、二遊間寄りの難しいショートバウンドの打球を難なくさばくシーンがあった。「あのくらいのプレーは2軍では当たり前のようにやれていたので」。本来の感覚が戻ってきたことに安堵の表情を見せる。

ファームで取り戻した感覚と自信…

 ファームに身を置くことで、客観的に自身を見つめ直すことができた。「2軍に行ったことで、(1軍では)余裕が全然なかったなっていうのを感じられただけでもよかったです」。不安や焦りが影響して、精神的な余裕のなさが本来のプレーを妨げていた。そのことに気づけたことが大きな収穫だ。

「『守備をメインで』と、ヘッドに言われました」と廣瀬は話すが、奈良原浩ヘッドコーチの狙いはそれだけではなかった。「もちろん試合勘は一つの要素ではあるけど、一方ではスタミナ的な面もあった。しんどいなと思いながらも、きっちりとやりきる力は必要になってくると思う。体のスタミナも、心のスタミナも。それが1軍でずっと戦う中では欠かせないかなとは思います」と、体力面の強化も含んでいたと明かした。これから厳しい夏場を迎える中で、1年間戦い抜くタフさはなにより重要だ。

 みずほPayPayドームと筑後との往復は「もう『眠い眠い眠い眠い』って思いながら(笑)」と疲労困憊だった様子。ハードな3日間ではあったが、主力を担う選手たちも過去には同じような経験を積んできた。廣瀬にとっては失いかけていた感覚と自信を取り戻す、貴重な機会になった。

(飯田航平 / Kohei Iida)