スタメン予定→突如として登録抹消 急転直下の「15分」…周東佑京と首脳陣の会話

庄嶋大一郎1軍アスレティックトレーナーと周東佑京【写真:古川剛伊】
庄嶋大一郎1軍アスレティックトレーナーと周東佑京【写真:古川剛伊】

日本ハム戦後に小久保監督が明かしたスタメン変更

 厳しい判断を強いられた。ソフトバンクの周東佑京内野手が29日、出場選手登録を抹消された。この日、小久保裕紀監督が報道陣の取材に応じ、周東のスタメン起用の可能性を明かしたのが午後3時20分頃。しかし、わずか40分後の午後4時の公示では“抹消”となっていた。

 周東は昨年11月に左膝の手術を受け、その影響は今も残る。今月18、19日の西武戦(ベルーナドーム)は欠場。さらに23日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)では右膝付近に死球を受けて途中交代していた。仙台遠征にも同行していたものの、楽天との3連戦で出番はなかった。

 ここまで打率.345、30安打、6盗塁と圧倒的な存在感を示すリードオフマン。試合後、指揮官は周東の抹消について「スタメン(の予定)だったけど最終的に話をして、急遽、15分くらいで決めました」と説明した。スタメン起用の方針だった首脳陣が、苦渋の決断を下すに至った背景には何があったのか。“15分″の裏側を探る。

中堅位置で試合前練習をする周東佑京【写真:竹村岳】
中堅位置で試合前練習をする周東佑京【写真:竹村岳】
右翼フェンスの下でダッシュ動作を確認する周東佑京【写真:竹村岳】
右翼フェンスの下でダッシュ動作を確認する周東佑京【写真:竹村岳】

 試合前練習。周東の隣には庄嶋大一郎1軍アスレティックトレーナーが付き添っていた。外野で打球を追う守備は行わず、バットを手に打撃練習へ向かう。通常はこの流れで調整を終えるのがルーティンだが、この日は違った。打撃練習後、再びグラウンドに姿を見せると右翼フェンス際へ。そこで軽いダッシュを繰り返した。これが、状態を見極めるための“最終確認”だった。最後はゆっくりとした足取りで、ベンチ裏へと消えていった。

 打撃練習を行う前に、周東は村上隆行打撃コーチと、大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチと言葉を交わしていた。当初の予定ではスタメン出場させる方針だったため、村上コーチは「先発で出るということだったので『きょうはこうやっていくからな』『そういうバッティング練習をしておいてくれ』と伝えていました。あの時点では出るつもりだったので」と、相手先発の伊藤大海へのアプローチを擦り合わせていたという。そして「走塁をしてちょっと足がキツいと。仕方ないです」と続けた。

打撃練習の前に会話する村上隆行打撃コーチ【写真:竹村岳】
打撃練習の前に会話する村上隆行打撃コーチ【写真:竹村岳】
打撃練習の前に言葉を交わす大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチ【写真:竹村岳】
打撃練習の前に言葉を交わす大西崇之外野守備走塁兼作戦コーチ【写真:竹村岳】

大西崇之コーチが問いかけた「どうや?」

 ほぼ同じタイミングで会話をしていた大西コーチも、内容を明かした。

「『どうや?』と。反対の足を痛めてしまう可能性もあるから、まだ4月だし、そこはもう正直に言おうなって。自分で(その後に)確認したところ、まだ厳しいという判断で。彼も決断するのに勇気が必要だったと思うよ。(死球を)受けてから日にちが経ったけど、その痛みが消えていないということだったので。試合に出られない状況が続くなら、『みんなで頑張っておくから』と伝えました」

 守備力を考えても、まさに替えがきかない存在。大西コーチが「そのために(佐藤)直樹もいるし、(笹川)吉康もキャンプ中からずっと練習しているから。こういうことはシーズン中なら必ずあり得る」と言えば、1番バッターについて村上コーチも「いるメンバーでやっていくしかない」と必死に前を向いた。

「1番&センター」という存在…代役はどうなる?

 わずか「15分」。まさに、公示の直前で下された判断だったことが浮かび上がってきた。死球を受けたオリックス戦から、この日のスタメン復帰を目指して状況を見守ってきたが、痛みは引かなかった。奈良原浩ヘッドコーチも「うちの選手はみんな責任感が強いですから。仙台で出られなくて、『出ないと』って使命感というか。でも左膝もあるし、そっちも必ずかばうので」と、周東の心中を察しながら抹消の理由を補足した。選手会長を欠いて戦うことにはなったが、チーム一丸となって乗り越えるしかない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)