2021年ドラ5の大竹が目指す支配下復帰
主力の背中を見てハッとさせられた。腐ってなんかいられなかった。「やらないといけないことが明白になりました」。リハビリ中の大竹風雅投手を救ったのは、栗原陵矢内野手と中日に移籍した上林誠知外野手だった。
2021年ドラフト5位で入団した大竹は、2022年1月の新人合同自主トレで右肘に違和感を覚えた。肘の靭帯損傷で同年4月にトミー・ジョン手術を決断。長期離脱を余儀なくされた。
東北福祉大時代も右肘のクリーニング手術を行っていたが、1年を超える長期離脱は初めてだった。「初めてだったので、苦しい経験でした」。胸中を明かす。
22日、独立・福島との試合で大竹は5回を投げ4失点でマウンドを降りた。最速は150キロをマークし、2回まで無安打に抑えていたが、3回に味方の守備の乱れもあり、3失点。4回にも1点を失った。
「状態としては悪くない感じだったんですけど、ボテボテだったり、弱い打球でもヒットになるっていうのが結構多かったので。もう少し真っすぐで押し切れるようにと思いました」
2022年4月に手術を受け、ルーキーイヤーをリハビリに費やした。テレビで見ていた1軍戦には、大卒同期の正木智也外野手が映っていた。正木は1年目から35試合に出場し、3本塁打をマークしていた。「投げられない悔しさとか、同期の正木が1軍に出ているのに自分は出れずにリハビリという……。メンタル面もかなり苦しかった」と振り返った。
そんな大竹を救ったのは、栗原と上林だった。栗原は2022年3月末に左膝前十字靭帯断裂の重傷を負い、その後に上林も右アキレス腱を断裂。筑後のリハビリ組に合流していた。
「言葉をもらったわけではなかったんですが、態度で示してくれて。僕が結構落ち込んでいて、明るくなかったんですけど。2人を見ていたら、やらないといけないことが明白になったというか。1軍選手のリハビリを見て気付かされた部分はありました」
2人とも大怪我を負い、最終的に同年シーズンでの復帰は叶わなかった。そんな状況でも明るく、練習をひたむきにこなしていた。「いるだけでもほんとに明るくなりましたし、やっぱり何より練習するので。そういったところはほんと見習わないといけない」。大竹の心を奮い立たせた。
担当スカウトの言葉も励みに「あれを続けて」
また、担当の作山和英スカウトの声かけも励ましになった。登板後は常に連絡をくれ、福島戦は観戦し試合前に鼓舞していた。「『あれを続けてたら大丈夫だよ』と言ってくださって。声をかけてくださるのがすごいありがたいです」と感謝する。
支配下から1年で戦力外通告を受け、育成再契約。苦悩の日々を過ごした。それでも、光を差してくれた上林は中日で復活の兆しを見せている。自らも再び2桁の背番号を目指し、必ず這い上がる。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)