今季初登板で1勝目…ヒーローインタビューに選ばれた
ナインの思いを代弁した。胸が熱くなるようなヒーローインタビューだった。ソフトバンクの東浜巨投手が20日、西武戦(ベルーナドーム)で先発登板。7回1失点で今季1勝目を手にすると、マイクを握った。「1人1人が、熱い思いを持ってプレーしています」――。
ウエスタン・リーグでは3試合に登板して防御率0.00。待望の今季初登板だった。「僕はもう開幕しているつもりで2軍でも投げていましたし、2軍でも同じように気持ちを入れてやっていたので。割と緊張はなかったです。1回、2回は少しフワフワしていましたけど、それ以外はいつも通りでした」。初回に失点したが、許した安打はわずか3本。結果的に2点差の接戦を制し、連敗を「5」で止めたのだから、右腕の投球が勝利に直結した。
東浜巨投手のヒーローインタビュー【動画:パーソル パリーグTV】
9回1死では、中堅の周東佑京内野手が左中間への飛球をスーパーキャッチ。ヒーローインタビューに選ばれた東浜も「チームがなかなか勝てていませんけど、1人1人が熱い思いを持ってプレーしている。その気持ちが出ていると思う。自分たちは重ねてやっていくだけだと思いますし、佑京のプレーもそうですけど、誰とは限らず、全員が1試合に集中してやっている証拠なのかなと思います」と口にした。
チームが苦しい状況であることには間違いないが、選手は全力で戦っている。「熱い思い」というワードチョイスは、東浜の中でどのように考えていたのか。「伝えたい」という純粋な気持ちが、そのまま溢れ出るようなインタビューだった。
「何も(言葉を)用意していなかったので、自然とそういうふうに出ちゃったんですけど。やっぱりね、全員が準備している。みんなが見られないところを、僕たち選手は見ているじゃないですか。試合でも勝てるように準備してやっているので、だから少しでもそういうのが(伝われば)と思いましたね」
プロ野球の世界は結果が全て。東浜も「『わかってほしい』ということではないんです。(準備しているのは)チームが、ですね。そういう意味で言いました」と強調した。選手にとって、気持ちはプレーで表現すべきだということも理解している。だからこそ「応援してほしい」という言葉は、心からの本音だった。
「熱い思い」という言葉をチョイスした理由は
「言葉にするのって、難しいじゃないですか……。ちゃんと伝えられたらいいなと思いますし、応援したいと思ってもらえるような言葉は使っていきたいです。(熱い気持ちというのは)それは自然に出てきましたし、純粋に心から思っていることでした」
毎日のように出番がある選手とは違い、先発投手は週に1回。悔しい思いを味わえば、やり返せるのも、ヒーローインタビューのチャンスだって週に1回だ。「1度だけなので、なおさらですよね。野手や中継ぎの人は毎日試合に出ているし、その大変さもわかるので。感謝の意味も込めて、そういった思いが出たんじゃないですか」。ベンチ裏で見ているチームメートの努力を、伝えたくなったのは信頼関係に他ならない。
試合中でも「勝ちをつけてあげたい」という野手のコメントを頻繁に見かける。試合はもちろん、記事などを通して、そんな言葉を投手陣は嬉しく感じている。「僕らも見たり、読んだりしているので、自分の中にも自然と入ってきますよね。ああいうふうになった時に、自然と出てきたんだと思うし。ホークスの先輩方が築いてきたところはあるんじゃないですか」。常に持ちつ持たれつの関係性。忘れてはいけないのは、お互いのリスペクトだ。
投手と野手は「信頼関係」、勝利における大事な要素
「その信頼関係って、勝つための一番大事な要素。試合の細かいところで勝敗が決まるのは、そういうものでもあると思うので。おのおのが自分勝手にプレーするんじゃなくて、勝つためにこうする。それをわかっている選手が多いので、状況的にはまだ苦しい状況ですけど、それができているのであれば、なんとか上がっていけるかなと思います」
20日の西武戦でヒーローインタビューは、こう締められた。「まだまだ序盤ですし、かといって厳しい試合は続くと思います。選手たちは1試合1試合、全力で頑張っていますので。ぜひ、球場に足を運んで、選手の姿を応援してください。よろしくお願いします」。謙虚で誠実。東浜巨らしい言葉だった。
(竹村岳 / Gaku Takemura)