ドラ1入団から3年「実力こんなもんか」 イヒネの苦悩も…斉藤監督が気付いた“変化”

独立・福島戦で計4出塁と躍動したイヒネ・イツア【写真:川村虎大】
独立・福島戦で計4出塁と躍動したイヒネ・イツア【写真:川村虎大】

イヒネが明かした胸中…ドラ1の重圧

 初めて味わう挫折だった。22日、3軍戦のグラウンドに現れた背番号「36」。選手では唯一の2桁番号だった。ドラフト1位という大きな期待が、重圧となってのしかかる。「自分の実力はこんなもんかって」――。

 この日、ヨーク開成山スタジアムで行われたホークス3軍と独立・福島との一戦。「1番・遊撃」で出場したイヒネ・イツア内野手は4打数2安打2四球で計4出塁と躍動した。この日から3軍に合流。もがきながらも、しっかりと好結果を残した。

 斉藤和巳3軍監督も「去年のイヒネを知っているからね」と温かい視線を送る。今季、ここまで2軍では打率.200と苦しんでいたイヒネだが、斉藤監督は“変化”に気付いていた。

「去年よりも表情がいい。去年の今頃を考えると、ちゃんと野球に向き合えているっていうかね。求められることが、彼に対して高いから。それを急に体感してしまったって色々しんどい思いはしていたと思う」

イヒネ・イツア【写真:川村虎大】
イヒネ・イツア【写真:川村虎大】

 愛知・誉高から2022年ドラフト1位で入団。ずば抜けた身体能力を持ち、走攻守すべてで将来を嘱望されていた。1年目は怪我にも苦しみ、昨季から本格的に実戦に出場。2軍で82試合に出場したが、打率.177、守備では20失策を記録した。

 高校時代は、何をやってもトップだった。野球だけではなく、三段跳びで全国3位になったこともある。イヒネ自身は「ある程度、自信を持って入ったのに。自分の実力はこんなもんかって」。自らの挫折を受け入れることができなかった。

 そんなイヒネに斉藤監督は声をかけた。ポジションこそ違えど、斉藤監督自身も高卒ドラフト1位で入団。21歳で右肩にメスを入れるなど、プロ初勝利までに5年を要した。昨季、2人でじっくり会話をしたことがある。その中で心のあり方、考え方を伝えた。

イヒネ・イツア【写真:川村虎大】
イヒネ・イツア【写真:川村虎大】

斉藤監督は理解も「チーム事情的にも…」

「人にはそれぞれ成長のスピードがあるから。どういう風に彼を見てやるかっていうところも大事やと思うけど。チーム事情的にもなかなかのんびりしていられない。そういったところの意識は上げていかないと。今のままでは、なかなかイヒネを1軍にっていうところまではいかない」

 イヒネ自身も斉藤監督の言葉で、自らと向き合うきっかけを得た。「(斉藤監督は)ポジティブな方向に持っていってくれて。結果で言ったらまだあまり出ていないんですけど、考え方の面で成長したかなって」と前を向く。

 もちろん斉藤監督も言うようにまだまだ、道半ば。1軍への道のりが近いわけではない。1歩1歩、上を目指して進んでいくしかない。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)