19歳の佐倉が3軍戦で先制3ラン含む4安打
一度、火がついたバットは快音を止めなかった。夕暮れ時、少し肌寒くなってきた福島の空に鮮やかな放物線を描いた。22日に行われた福島レッドホープスとの3軍戦、若き大砲がその片鱗をみせた。
「4番・一塁」で出場した佐倉侠史朗内野手は、初回に先制3ランを放つと、3回には右中間を破る適時二塁打、5回には中前打と快音を連発。三塁打が出ればサイクル達成という活躍を見せ、豪快なスイングでチームを牽引した。
一方で、斉藤和巳3軍監督からは“注文”もあった。「本当に上に行きたいなら…」。指摘したのは本塁打直後のプレーだった。
「そういったところも守備にも出ているしね。1つずつ、本人がどれだけ克服していくかが、本当に上に行きたいなら、大事なところだと思う」
斉藤監督が“そういったところ”と指摘したのは初回2死での一塁へのゴロの場面だった。一、二塁間の声掛けがうまくいかず、1歩目の判断が遅れ、バウンドに対応できずにファンブル。失点にはつながらなかったが、2軍、1軍と上を目指す立場では見過ごせないミスだった。
斉藤監督が指摘「打つ方は色々考えるけど…」
「みんな『打たないと上がれない』っていうのはわかっていて。だから打つ方は色々考えるんやけどね。野球は打つだけじゃないよって、選手には求めていきたい。選手もわからなあかんところやね」
九州国際大付高では1年生からベンチ入りし注目を集めた。当時、大阪桐蔭高・前田悠伍投手、花巻東・佐々木麟太郎内野手(スタンフォード大)、広陵高・真鍋慧内野手(大商大)と“高校四天王”と称された。2023年育成ドラフト3位で地元でもあるホークスに入団した。
高校通算31本塁打を誇る。スラッガーとしての期待を一身に背負う一方で、2軍、1軍に上がるにつれ、打つ以外でも高いレベルが求められる。
「良い選手っていうのは、守備、走塁に目もしっかり向けているから。走力の有無とか、守備範囲の広い狭い関係なくね。狭いなら狭いなりの技術を高めることだってできるし、走力がなかったとしても、打球判断の質は高められるはず」
必要な“安定性”「きょうは良かったではなく…」
佐倉自身も課題ははっきりと理解していた。「バッティングが持ち味だからって、守備を疎かにしているわけではないので。全体的なレベルアップはもちろん必要」。失策直後には金子圭輔3軍内野守備走塁コーチにアドバイスを受けに行き、打球判断の基準を教わった。「ああいうのを捌けないといけないですし、細かい野球の技術や当たり前のことを当たり前にできるように」と反省する。
支配下で1軍で活躍するには長いシーズンで高いパフォーマンスを出すしかない。打撃だろうが守備だろうが、“波”があれば、それだけ信頼は薄くなる。斉藤監督も「きょう“は”良かったっていうんじゃなくて、きょう“も”良かったになるように。どれだけ続けられるかやから」。期待しているからこそ、19歳へ厳しい言葉を並べていた。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)