批判覚悟の鷹入団…受け止めた世間の“声” 「今もずっと…」上沢直之が明かした心境

米時代の後悔「ネガティブなことばかり…」

 鷹フルによる「月イチ連載」企画。今回は新加入の上沢直之投手を深掘りしていきます。第1回のテーマは「ホークス入団を決断した背景」について。1年でのNPB復帰、ホークスへの入団には様々な意見が寄せられました。上沢投手の覚悟、現在の心境に迫りました。次回連載は23日。

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 一度失いかけた自信を徐々に取り戻しつつある。上沢はここまで3試合に登板し、1勝1敗、防御率3.38。16日にみずほPayPayドームで行われた楽天戦では4回途中5失点(自責3)で移籍後初黒星を喫したが、「投げているボール自体は日に日に良くなってきている」と手応えを口にする。

 2023年オフに日本ハムからポスティングシステムを利用して、米球界に挑戦。1年目はメジャーで2試合に登板したが、ほとんどをマイナーで過ごした。慣れない環境で家族と離れ離れの生活。「部屋に帰っても、今思うとネガティブなことばかり考えていた」。遠い目で当時を振り返った。

 言葉も通じない中での単身渡米。右肘の怪我でシーズン終了前に途中帰国し、そのままフリーエージェントになった。様々なことを熟慮した結果、日本球界復帰を決断。古巣ではないホークスへの入団には、OBや解説者たちがテレビで様々な意見を述べ、SNSでは物議を醸した。そんな言葉は上沢自身にも届いていた。

「色々騒がれた部分もあったので。そういう目で見られてるし、今もずっと見られている」。厳しい視線も覚悟の上だ。「そういった意味でやっぱりしっかり結果を残さないと。自分をどうにかできるのは自分しかいないので。結果を残すことが一番大事だと思う」。その言葉には、ホークスの一員としての強い決意が見られた。

学んだ異国での戦い「簡単な話じゃない」

 もがき苦しんだ米国での1年間。「できないことばかりにフォーカスして、できない自分を結構責めることが多かった」と振り返る。それでも学んだことも多かった。「言葉の通じない国でプレーすることはなかなか簡単な話じゃないと、僕も身をもって感じました」。

 今季から加入したホークスで、ロベルト・オスナ投手、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手とチームメートに。それぞれ守護神、セットアッパーとして期待されていたが、開幕から打ち込まれる日々が続いた。そんな助っ人に上沢は積極的に声をかけた。それも、米国での経験があったからだった。

「彼らを理解してあげることが大事だなと僕は思う。オスナ氏を含め野球のスタイルも違うし、その中でプレーしているのは、本当に僕は尊敬する。彼らがリラックスできる環境を作ることは、僕にとっても、彼らにとってもいいこと」

 日本ハム時代に70勝を挙げたからといって、渡米後に再び同じような成績が残せる保証はない。オープン戦では4試合で防御率3.52。3月1日の西武との練習試合では3回7失点と打ち込まれることもあった。「正直、不安な気持ちがないわけではなかった」と明かす。

 それでも、キャンプでは前向きにNPB球の感触や、米国より柔らかいと言われるマウンドの感覚を取り戻してきた。「メンタル的にうまくいかない、納得いかないことはたくさんありましたけど、それでもできたことにフォーカスして、なるべくネガティブな方に意識を向けすぎないようにはしてましたね」。

 チームの苦境が続く中、日本時代の輝きを取り戻しつつある右腕。世間の厳しい声には、結果で返すしかない。「新チームに入って期待されているので」。ホークスを勝利に導くことが、今の上沢の仕事だ。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)