二塁を守るジーター・ダウンズ【写真:栗木一孝】
明確な課題を突きつけられた。首脳陣も、確かな変化を感じ取っていた。ソフトバンクのジーター・ダウンズ内野手が17日、出場選手登録を抹消された。18日にはウエスタン・リーグのオリックス戦(タマスタ筑後)に出場し、4打数1安打。「自分がやるべきことをやるだけです」と言い聞かせた。再出発となった助っ人は一体、どういった目的を持って日々を過ごすべきなのか。
昨年7月にホークスに入団。7試合に出場し6安打を放つなど、確かな才能を見せていた。鷹2年目となる今季は、開幕スタメンを射止めた。12試合に出場して打率.222、0本塁打、1打点。栗原陵矢内野手の1軍昇格にともない、再調整となった。小久保裕紀監督も「打つよりも守備の方(での抹消)。栗原が戻ったらサードは固定なので、セカンドを3人置いていても、というところ」と説明していた。
ダウンズは二塁で5試合、三塁で5試合に出場。9日のオリックス戦(京セラドーム)では痛恨の失策を喫し、首脳陣から「(二塁は)正直厳しい」との声もあがった。1軍からどのような課題を受け取ったのか。松山秀明2軍監督が明かす。起因しているのは、助っ人のキャリアそのものだった。
「セカンドのプレーに慣れてほしいというか。今までショートしかやったことのない選手なので。もうセカンドって誰でもできるでしょみたいな感じでみんなは思いがちですけど、意外と動きは難しいので。色んな絡みが多い。逆に見えないところで動かないといけないので、運動量もそういう部分が多いんですよ。どうしても彼にとっては経験値があまりないので。そこを覚えていく。カバーリングであったり、カットの位置であったり。そういうところって、やっぱり経験なので」
二塁が内野の要であることは言うまでもない。米国時代も含め、キャリアのほとんどを「遊撃」として過ごしてきたが、ホークスには今宮健太内野手に加え、川瀬晃内野手もいる。チームとしてダウンズに求めるのが二塁としての働きなのであれば、全力で覚えてもらうしかない。今後、2軍での起用方針も「出るならセカンドです」と指揮官が明言した。
この日、オリックスとの2軍戦。松山2軍監督の目にとまったシーンがあった。2回2死一塁、大里が放った打球は右翼線へ。ダウンズは中継に入る。外野からの返球を、グラブに当てながらも弾いてしまった。幸い、一走は三塁で止まったが指揮官も「カットのやつもしっかり捕らないと。まだ軽率なところがあるというか、あれも大事なプレーなので。触らないで(送球を後方に)任せるか、自分がしっかり処理するかのどちらかです」と続ける。
高田知季内野守備走塁コーチも「1軍はクリがいますから。ダウンズだったらセカンドがチャンスだと思うので、その方が可能性はあるんじゃないですか」という。二塁には、ボールには直接絡まないサインプレーやカバーリングが数多く存在する。「チームとしての細かいプレーが二遊間は多いので、それに対応してもらわないといけない」とキッパリ言った。ポジションとして、日米の違いも色濃く表れているだろう。高田コーチが強調するのは、“ホークスの野球”だ。
「ホークスは細かいところを徹底する。全力疾走もそうですし、守備でのカバー、カットもそう。すごく厳しくするチームなので。アメリカ特有の……ってものもあるのかもしれないですけど、ここにいる限りはやってもらわないといけないです。1軍でも言われていることですし、(本人も)理解はしていると思います」
2軍に合流して間もないが、昨シーズンとの明確な違いを高田コーチは感じている。「セカンドというよりもショートがメインだったし。去年はフライを打ったら走らない、とかもあったんですけど、今は日本の野球に対応しようとしている。そういう姿を見られる数も多くなっていましたし、彼なりにやろうとしているのはあります」。一流だからこそ、細かいところまで決して妥協しない。勤勉な性格は誰もが知るからこそ、徹底したホークスの野球を覚えてもらうつもりだ。
「(二塁の)経験がそもそも少ないですから。今はせっかく2軍にいるので、一緒にやっていけたら」と高田コーチ。ダウンズも「しっかりとした状態でやっていくだけです」と力を込めた。栗原と今宮、欠かせない戦力がいる状況の中、二塁手として成長を遂げていく。
(竹村岳 / Gaku Takemura)