中継ぎの競争「かなり厳しい」 “6人以外”に求めた基準…実は昨秋に得ていた「答え」

倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:冨田成美】
倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:冨田成美】

救援陣で名前を挙げた6人「純粋に不動だなと」

 開幕前、鷹フルは倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)の単独インタビューを行いました。第3回のテーマは「中継ぎ陣」について。開幕1軍メンバーを決める中で、首脳陣は1つの明確な基準を設けていました。「ずっと監督とも話をしていました」。また、投手陣の“トップ”である倉野コーチが離脱者にも言及。唯一名前を挙げたのは「大きい」と語る存在です。

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 救援陣はロベルト・オスナ投手を筆頭にダーウィンゾン・ヘルナンデス投手、松本裕樹投手、藤井皓哉投手、杉山一樹投手、尾形崇斗投手らが1イニングを投げ切る役割を期待されてきた。いわば、競争の輪からは外れて、すでに枠を与えられた存在。倉野コーチも「もちろん。伸び代とか期待値とかで、そこの6人に入っているわけではない。純粋に、力を見た時にこの6人は不動だなってところです。怪我さえしなければ」と解説する。

 6人の中でも、実績を見ればまだまだ伸び代があるのは杉山と尾形だろう。昨秋の段階から、小久保裕紀監督も2人の名前を挙げていた。杉山は昨季、チームトップタイの50試合に登板して4勝0敗、防御率1.61。尾形も12試合登板ながら、打者を圧倒する直球には、首脳陣も高い評価を与えていた。オスナ、ヘルナンデス、松本裕、藤井という“牙城”に、なぜ若き右腕たちが食い込むことになったのか。

尾形崇斗(左)、杉山一樹【写真:冨田成美】
尾形崇斗(左)、杉山一樹【写真:冨田成美】

「それも監督が決めたことですけど。去年は、松本と藤井が離脱して日本シリーズにいなかった。そこで杉山と尾形が力を見せてくれて、そこのポジションに入ってくれた。これが答えですよね。そうなれば、2人(松本裕、藤井)と同じとは言わないですけど、その枠に当然入る投手という評価を、2人は僕らに示してくれました」

 すでに6人が決まっているのなら、残りは当然、厳しい戦い。春季キャンプからの競争で、開幕1軍を勝ち取ったリリーフは大山凌投手、松本晴投手、津森宥紀投手だった。倉野コーチも「かなり厳しいものだったし、これからも争いは続いていくわけですから。そこで残ったということはすごく自信にしてほしい。高いレベルの競争ができているんじゃないか」と話す。“6人以外”の投手に与えた課題は、たった1つだった。

「オスナたち、6人に関しては複数イニングを投げる設定はしていないです。もちろん投げてもらうこともありますけど、それをずっとやるわけではないので。そうなると、複数イニングを投げられる人が必要になる。先発が崩れた時に、ロングができる人が必要になってきますよね。ショートリリーフをする投手が固まっている以上、残りの2人、ないし3人は絶対に2、3イニングは普通に投げられないといけない。そういう投手が、入るんだろうなっていうのはずっと監督とも話していました」

離脱者の中で唯一名前を挙げた右腕「大きかったですよ」

 3月28日、ロッテとの開幕戦(みずほPayPayドーム)。先発の有原航平投手が7回7失点で降板すると、2番手は津森だった。2イニングを投げて1失点。「複数回」という役割を果たし、バトンを繋いだ。先発と中継ぎにいるメンバーの力量を見極めて、適材適所にハメ込んでいく作業はこれからも続く。「実力しかない」という倉野コーチの基準は、常に明確だ。

 オープン戦では岩井俊介投手が確かな成長を見せ、又吉克樹投手も防御率1.69とアピールしたが、開幕1軍入りとはならなかった。「又吉もあれだけの実績があって、1点しか取られていないですけど入れなかったわけですからね。それくらい、かなりレベルが高くなっている。何回も言いますけど、惜しくも残れなかった選手への期待もかなり大きいです」。倉野コーチの提案により、又吉はファームで先発に回ることになった。

 投手陣を語る上で、倉野コーチが唯一、離脱者に言及した。「大きかったですよ」というのが、カーター・スチュワート・ジュニア投手だ。春季キャンプ中に左脇腹を痛めて、現在もリハビリを続けている。首脳陣が早々から開幕ローテーションに挙げていた1人だった。

カーター・スチュワート・ジュニア【写真:冨田成美】
カーター・スチュワート・ジュニア【写真:冨田成美】

 今季が来日7年目。2024年は20試合に登板して9勝を記録した。倉野コーチも「去年の後半は軸として回っていたので、その1人が欠けるのは大きいですよね。他の投手にチャンスが回ってきた。これでスチュワートが復帰した時に、より層が厚くなる。痛いですけど、ポジティブに考えるようにしています」と言及した。目指すのは、秋に味わう歓喜の美酒。チーム一丸となって、まずは目の前の一戦を全力で戦っていく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)