3月1日の西武戦で7失点「心配しないわけではない
開幕前に鷹フルは、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)の単独インタビューを行いました。春季キャンプ中、上沢直之投手に感じていた“伸び代”。7失点と打ち込まれても、まったく心配していなかった理由を語りました。また、開幕投手に選んだのは有原航平投手。「そもそも競争の輪に入っていない」と、“初陣”を託した経緯とは――。
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3月1日、宮崎で行われた西武との練習試合。上沢は2回0/3を投げて10安打7失点を喫した。倉野コーチも「今日の結果イコール評価ではないです」としながらも「心配しないわけではない」とも。その後、帰福してオープン戦が本格化。右腕の開幕ローテーション入りが明言されたのは、3月8日だった。ロッテ戦(ZOZOマリン)で4回1失点と結果を残し、小久保裕紀監督が「もう決まりです」と語った。
一度は「心配」という言葉も使った上沢の状態。有原、リバン・モイネロ投手、大関友久投手に続く“4人目”として名前を挙げられた。その経緯と理由を、倉野コーチが明かした。2月から感じていた“伸び代”こそ大きな要因だ。
「キャンプ中にピークを持ってくることは、しないですよね。経験もあって、そのレベルの投手に『キャンプ中にピークを持ってこい』だなんてことはできないし、やるべきではない。2月を過ごしていく中で、『これだったらここまでは上がってくるだろう』という予測は立てられるわけですよ。それを見て、ここまで上がったら間違いなく1軍の戦力だよねってものを示したわけです。何も戦える武器がない状態で、名前だけで選んだわけでは全くないです」
キャンプ中、初めてブルペン入りしたのは第1クール2日目。その後にライブBP、実戦登板と段階を踏む中で、確かな上昇気流を首脳陣に示していた。倉野コーチは「『大丈夫かな?』って状態だったら、そんな簡単には決められない」と続ける。開幕ローテーションの5人は、純粋な実力の序列で決めた。上沢も当然、勝ち取った1枠だ。
有原航平を開幕投手へ…早期公表した理由とは
「もちろん。シーズンに入ったらこういう投球をしてくれるだろうって予測ができた、それを見せてくれたということです。力のある投手なので。ここまできたらシーズンに入っても貢献してくれるだろうって予測がつきました」
3月30日のロッテ戦(ZOZOマリン)、ホークスでの初登板は6回2/3を投げて3失点だったが、試合を作ってチームに勝つチャンスを与えた。かつての“7失点”は、あくまでも調整の途中。しっかりと状態を上げてシーズンに入ってきたのだから、首脳陣の目は正しかった。
その2日前、開幕戦のマウンドに立ったのは有原だ。7回7失点という内容で黒星を喫したが、たった1人しか立てないまっさらなマウンド。右腕の選出に、首脳陣は「満場一致」だったという。小久保監督は「お前しかいない」という言葉で背中を押し、倉野コーチも「決めたのは、最終的には監督ですから。経緯というか、話をした上で監督が決めようというところですね」と話した。
昨シーズンは26試合に登板して14勝7敗、防御率2.36。最多勝のタイトルを獲得し、リーグ優勝にも貢献した。日本シリーズを終えると同時に、2025年の戦いもスタートした。昨年11月には、もう有原に開幕投手を託すと伝えていた。早期の公表も首脳陣の意図で「準備はすごく大切だし、少しでも充実してもらうため。今回は早く言ってマイナスなことはひとつもないし、プラスしかないという判断のもと、そういう発表(11月に)している」と倉野コーチも代弁する。
春季キャンプはS組での調整。当然、先発ローテの中心として回ってもらう存在だ。「そもそも競争の輪に入っていないですから。大黒柱として、そういうものを見せてもらっているし、それだけの結果を去年残した。何も異論なく、自然と(開幕投手は)決まりました。決まっているなら早く言おうと監督もおっしゃっていたので」。3月28日こそ結果には繋げられなかったが、取り返すチャンスはまだまだある。
(竹村岳 / Gaku Takemura)