30日のオリ2軍戦で11安打…連勝止まるも打線は活発
虎視眈々と、枠を狙う。最大のピンチではあるが、若鷹たちにとってはチャンスだ。近藤健介外野手が3月31日に出場選手登録を抹消された。昨シーズン、パ・リーグMVPに輝くなど圧倒的な存在感で支えてきたが、いきなり大黒柱を欠くことになった。開幕3連敗と、スタートダッシュを切れなかったホークスだが、2軍には鼻息を荒くして待っている選手がいる。
3月30日、ウエスタン・リーグのオリックス戦(タマスタ筑後)。7連勝で迎えた一戦は又吉克樹投手が先発した。3回4失点を喫し、序盤から追いかける展開となる。しかし、打線は活発。4回に1点を返すと、7回には笹川吉康外野手が3ランを放った。結果的に敗れはしたものの、11安打を記録。笹川は4安打、柳町達外野手は3安打、山本恵大外野手も2安打だ。
佐藤直樹外野手、岩井俊介投手ら3人に“好調の要因”を聞いてみた。まずは笹川だ。春季キャンプからA組に抜擢され、チームメートも「えぐい」と口を揃えるそのパワー。今季の期待株ではあったが、オープン戦では打率.208と結果を残せず。3月13日からファームに合流した。2軍でもなかなか数字を残せずにいたが、直近5試合では11安打の固め打ち。打率.271まで上昇させてきた。「いい感覚を掴めています」と頷く。
過去の経験上、春先から調子を上げることに難しさを感じてきた笹川。今季は「しっかり調整できていた」というが、2軍戦でも打率1割台に沈む日々だった。要因は、1軍を経験したこと。「1軍のピッチャーに対応しようとして調子を落としました。それが最近は修正できたというか、克服しつつ成長できていると思います。ホームランも引っ張り方向でしっかり打球が上がったので」。
2軍降格となり、首脳陣から与えられた課題は変化球に対するアプローチ。「真っすぐは1軍でも打てていたので。変化球が前に飛ばないっていうのは小久保(裕紀監督)さんからも言われました」と、授かった“宿題”を明かした。投手のレベルが上がれば当然、球速もボールの質も上がる。「(タイミングを取る)始動を早めると、それがよくなかった。ボール球も振っちゃう感じだったので。今は速い球でも対応できるように、iPitchでも一番速いのに設定して打っています」と、最速150キロと毎日向き合っているところだ。
佐藤直樹も打率.320と好調「しっかりと引っ張れている」
佐藤直も打率.320を記録している。今季が6年目。入団時から打撃面に課題を置いてきたが、確かな成長曲線を描いている。「イメージ通りにいっている打席が多いですね。打つべき球をしっかり打てている感じです」。オープン戦では4打数1安打に終わり、2軍降格となった。
昨シーズンも2軍戦打率.343。右方向への打撃を磨き、自分だけの形を作ろうとした。「今年は引っ張れるようになったんです。去年は真っすぐに刺されていたので、今年はしっかりと引っ張れている。最近は強引にいってしまっていたんですけど、修正できると思います」と、確かな感覚は手に残っている。現在、ウエスタン・リーグで2本塁打を放っているのも、成長の証だ。
岩井俊介が記録する“メジャー級”…激増した数字
岩井は、最後まで開幕1軍入りを争った。30日のオリックス戦では、9回から登板して3者連続三振。直球は軽く150キロを超えるようになってきた。成長の裏にあるのは「真っすぐ足を踏み出しているから、ですね」。アマチュア時代から、左足がアウトステップしてしまう悪癖があった。「2足分くらいですかね。でも大学を引退したら、さらに開いちゃうようになってしまったんですよね」。
1年目だった2024年は15試合に登板して1勝1敗1セーブ、防御率3.46。開幕1軍入りも果たしたが、4月5日に登録抹消された。「その時も(首脳陣にはアウトステップが課題だと)言われて、2軍に落とされました」。その後も克服しようと試行錯誤したが、フォームを変えようとすれば当然、体に違和感が残る。「最初はめっちゃ悪くて、投げにくかったです……。足を開くのと、閉じるのとではリリースポイントが違うので」と結果を残したい気持ちとの間で、葛藤を抱きながら腕を振っていたという。
今春のキャンプでも、若田部健一投手コーチとマンツーマンで練習を重ねてきた。メジャー級の回転数も記録するようになり「足を閉じていた方が、やっぱり真っすぐが走る感じはするんです。シンプルに球速も出ていますから。あとは、空振り率がめっちゃ増えたんですよ。それが大きいです」。表情から充実感が伝わってくる。1軍の窮地を救うのはきっと、猛スピードで成長する若鷹たちだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)