マスク越しに味わった“魔の6失点” 谷川原健太が感じた恐怖…ベンチから見た“必要なもの”

開幕戦でマスクを被った谷川原健太【写真:冨田成美】
開幕戦でマスクを被った谷川原健太【写真:冨田成美】

プロ10年目の谷川原健太…開幕マスクも“魔の6失点”

 28日に本拠地で行われたロッテとの2025年シーズン開幕戦。先発マスクをかぶったのは、プロ10年目を迎えた谷川原健太捕手だった。「めちゃくちゃ緊張しました」と振り返った一戦。エース・有原航平投手と密にコミュニケーションを取りながら、テンポよく試合を進めた。5回までパーフェクト。球数も少なく、理想的な試合運びだった。

 しかし、6回に流れが一変した。先頭の高部に二塁打を許すと、すぐさまマウンドに向かい間をとった。それでも流れは止まらずに、4連打を浴びるなど一挙6失点。谷川原にとってもほろ苦い開幕戦となった。

「コミュニケーションは結構取れていたんですけど、こういう結果になってしまった」と唇を噛む。捕手陣を統括する高谷裕亮バッテリーコーチはどのような思いでベンチから見守っていたのか。その思いと、これから谷川原が成長していくために必要なことを語った。

「ゲームを作ることはもちろん期待はしています。でも、どんな状況でもビビらずに、堂々としてほしいというのはあるので。今日(28日)だけではどうこうとは言えないですけど、今後そういうふうに堂々と立ち振る舞ってほしいなと思いますけどね」

 イニングが終わるたび、すぐに有原の元へ向かい、コミュニケーションを取りながベンチに戻った。試合を作るためには大事な作業だ。初安打を浴びた直後にマウンドへ向かったことも成長の現れだろう。敗れはしたものの、捕手としての懸命な振る舞いは随所に見られた。

マウンドに集まった谷川原健太(左)と有原航平【写真:冨田成美】
マウンドに集まった谷川原健太(左)と有原航平【写真:冨田成美】

開幕3日前に伝えられた先発「3日前ぐらいから緊張していました」

 とはいえ、1イニング6失点は大きな反省材料だ。高谷コーチは「間を取ってあげるとか、バッターの特徴も見るとかを含めて、サインを出して打ち取っていくのがリードだと思っているんで」と説く。準備、反省、切り替えを繰り返して経験を積むしかないが、改善できる部分は多くある。配球を考えることだけがリードではない。

「イメージと戦略を立てて、『こう行きましょう』ってなっても、向こうも対策はしてくるので。『あれ?』ってなった時に引き出しがどんどん増えていくことが大事。『このカードがダメだったら次はこのカード』『これだったらこう』っていうのを、どんどん持てるようになってくれればいいんじゃないでしょうかね」と、谷川原へ期待を寄せる。

 谷川原が開幕マスクを伝えられたのは、25日の練習日だった。「初めてでしたし、やってやるぞっていう気持ちがありましたけど、3日前ぐらいから緊張していました」と心境を明かす。与えられた役割を全うしようと臨んだ開幕戦。結果を重く受け止める。

「143試合ある中でこういう日もあるんですけど、やっぱり減らしていかないといけない。次に繋げることは絶対大事になるので。ここでくよくよせずにしっかり反省して、次に繋げたい」

 試合後にはミーティングも行い、配球だけではなく「リードとは何か」を再確認した。「技術も頭も成長していくためには、こういう経験を糧にして絶対に生かさないといけない」と高谷コーチ。課題も多く見えたが、成長のチャンスでもある。開幕戦で得た経験が、今後の飛躍につながるはずだ。

(飯田航平 / Kohei Iida)