「ユニホームに興味ない」 城島健司が背負う使命…CBOで継承する“王イズム”

小久保裕紀監督、王貞治球団会長、城島健司CBO(左から)【写真:竹村岳】
小久保裕紀監督、王貞治球団会長、城島健司CBO(左から)【写真:竹村岳】

絶対に外さない「会長付」の肩書き…“王イズムの継承”は2人が背負う使命

 城島健司CBOが、鷹フルの単独インタビューに応じた。第2回のテーマは「王会長の存在について」。1994年のドラフト指名から30年、今も「王さん」と呼ぶ理由とは? 2020年に球団復帰して、胸に刻まれている言葉は「監督は孤独なんだ」――。自分自身がどうあるべきか、今も追い求めているものに迫った。

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 城島氏が今背負う肩書き。正式名称は「チーフベースボールオフィサー兼会長付特別アドバイザー」だ。2020年にホークスに復帰。選手としてメジャーリーグも4年間、経験した48歳は「いまだにユニホームに興味はないですよ」と言う。自分自身の存在意義は、王イズムを後世に伝えていくことだ。

「それだけだと思うよ。僕はそのメッセージとして最初から会長付アドバイザーで入ってきて、シニアコーディネーターの時も会長付っていうのは外していないですし。もうCBOって言ったら別に『会長付』はいらないんですけど、入れているのは僕はそこでできることがあると思っている。未来に王貞治が作ったこんな素敵なチームがいたんだよ、と。30年、40年後に王さんの功績が薄れているようなチームじゃだめだと思うので。その思いを、伝えていけますよっていうのが僕のスタンスですね」

 孫正義オーナーが掲げる「めざせ世界一」を達成すること、“王イズム”を受け継いでいくことが最大の目標だ。「分業制なので。小久保(裕紀監督)さんは現場のリーダー、僕はフロントのリーダーです」と表現する。本気で目指す10連覇という目標に向かって、王会長の背中を見てきた2人が礎を築く。それが今年の体制だ。

 1月30日、箱崎宮で毎年恒例の必勝祈願が行われた。先頭を歩いていたのは4人。一番右が後藤芳光球団社長。王会長の両脇を固めたのが、城島氏と小久保監督だ。感慨深さは「全然ない」と笑い飛ばしたが「でも、王さんちょっと嬉しそうでしたよね」と頷いた。ダイエー時代から支えてきた愛弟子が、隣を歩いてくれた。ほころんでいる表情を、城島氏も見逃していなかった。

城島健司CBO(左)、王貞治球団会長【写真:竹村岳】
城島健司CBO(左)、王貞治球団会長【写真:竹村岳】

 戦力を率いてチームを勝利に導くのが監督の役目。フロントは補強や査定、資金繰りなど仕事内容は多岐に渡る。「今は分業制じゃないですか。1軍監督は小久保さん、フロントCBOに俺、三笠GMもいれば、広報もいる。多くの人がチームを支えている」。一方で、自分が憧れる人は、チームの全てを背負いながら指揮を執っていた。

「王さん、30年前は1人でしよったんよ、全部。当時、ホークスで1番有名な人だったじゃない。メディアもそうやし。スポンサーさんを募ったパーティーも、全部王さん。結局、九州に人を集めるために、あの人が全部やっていた。その上で、監督もしていたんよ。すごいことやっていたんだなって実感しています。それが分業制になったので、現場は小久保さんに、フロントのところは僕がするんですけど。仕事を少しずつ引き継いでいるところですね」

 小っ恥ずかしさがあるところも、城島氏らしいのかもしれない。「結局、自分がこういう立場(フロントのトップ)にならないと、質問するのもおかしい」と照れ笑いする。尊敬はしているのに、自ら距離を縮めるのは少し気を遣う。CBOに就任したことで“質問していい理由”が生まれた。王会長も、今年5月に85歳を迎える。「球団経営、運営、戦略だったり。そういうのを今、時間がある時に『どうしたらいいと思いますか』って聞きながら。僕はアドバイザーの肩書きがありますけど、王さんは僕のアドバイザーでもあるんです」。

 現役引退から8年が経ち、ホークスに復帰した2020年。王会長からふいに言われたことが、今も胸に残っている。「監督は孤独なんだ」。その時は、どんな意味なのかわからなかった。「工藤(公康)さんの時は、僕が毎日球場にいるわけじゃなかった。僕の顔を見るなり、王さんが『監督室に行ってこい』と。『なんでですか?』って言ったら、『なんか悩みありますか? とか、こんにちはって言って来りゃいいんだよ』って」。今なら、孤独という言葉の意味が、よく理解できる。

「何のことかなって思っていたんですけど、監督が愚痴を言ったりできないじゃないですか。僕だったら、球団の人間ではあるけど球団にがっつり入っているわけじゃなかったので。監督って孤独で弱みを見せれないから、『話をしてこい』ってことだったんだと思います。ということは、王さんも孤独だったんでしょうね」

 監督にとってもっとも重要なのは、チームの結果。下にはコーチがいて、プレーする選手がいて、サポートする裏方さんたちがいる。常に凛として、弱音を吐き出せないポジションだからこそ、「耳を傾けてあげなさい」とアドバイスされた。「小久保さんは年齢も近くて、デビューした環境とか切磋琢磨した時期は同じ。兄ちゃんみたいな感じです」。フロントのトップになったことで、今は現場を預かる小久保監督とも、自然に距離を縮められる。

 30分を超えたインタビュー。城島氏は、王会長のことを終始「王さん」と呼んでいた。「最近、やっと会長って呼べるようになったんですよ。立場上、小久保さんも監督なんですけどね。僕にとってはずっと(王会長が)監督だから」。プロ入りした1995年に出会い、もう30年が経つ。大好きな人が作ったチームがもっと愛されるように。それが、自分だけの生きがいだ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)