「今ここでかわすピッチングをしても、もう意味がないんです。自分のスタイルを確立していかないと、シーズンを最後まで投げ切ることができないので。だから打たれてもいいから、自分のスタイルを作るためにも真っすぐを投げるようにしていたんです」
目先の目標でもある開幕ローテ入りは当然、重要なことだ。一方で、シーズンを通した長い目で見ると、変化球に頼る投球では勝ち星がついてこない。昨季に感じた“壁”を、自分なりに乗り越えないといけないと分かっているからこそ、真っ向勝負を挑んだ。初回1死二塁、吉川に捉えられたのも147キロの直球だった。
先発に挑戦した昨シーズンは、開幕ローテに入り、前半戦だけで6勝を挙げた。順調な滑り出しにも見えたが、後半戦は1勝止まり。思うように勝ち星を積み重ねることができず、結果的に7勝7敗でシーズンを終えた。1試合の中でという意味ではもちろん、1年を通してスタミナが最大の課題。自身の投球を見直す大きなきっかけになった。
「真っすぐにこだわっていかないと、僕の場合は怖さがなくなるんです。これまでも何度も『かわすピッチングをするな』と言われてきたので」
七色の変化球を操ると言われる右腕。直球の回転で球速差をつける独自球種“真っチェ”など、器用さが持ち味でもある。だからこそ、鍵となるのが直球だ。昨シーズン中から倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)と何度もミーティングを重ね、その度に課題を明確にしてきた。
「どこかでコントロールしようとしている自分もいたので。もっとがむしゃらになって、ストレートにこだわらないといけないなと、また改めて思いました。いいボールもありましたし、悪いボールもあったので、もっと安定したストレートを投げれるようにはしたいです」
まもなく迎える開幕。大津にとってローテに入ることが全てではない。自身が目指すスタイルを少しでも確立していくことが、納得する成績を残すための近道になる。「もっと空振り三振が取れるように、強い真っすぐを投げたいなと思っています」。次の登板ではどのような投球を見せるのか。右腕の必死な姿を追い続けたい。