“太陽”と“ライバル”…2人が誓った 「今後は野球界のために」
松坂大輔氏が鷹フルの単独インタビューに応じた。「まさかそんな報告だとは微塵も思わなかった」と振り返った和田毅氏の現役引退。プロ野球界の一時代を築いた“松坂世代”のトップランナーだった2人。今だから明かす、知られざる秘話に迫った。
鷹フル「和田毅引退試合特設ページ」
和田毅投手の引退を記念し、鷹フルは3月14日~16日の3日間「WaDa-Full」に。王貞治氏や松坂大輔氏らが語る特別企画「和田毅の記憶」、ホークス現役選手74人のメッセージを公開。「和田毅引退試合特設ページ」はこちらから。続きを読む
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“松坂世代”。94人ものプロ野球選手が誕生し、時代を彩った。その世代の中心選手として、高校時代から注目を集めた松坂大輔氏。横浜高のエースとして甲子園で春夏連覇という偉業を成し遂げ、プロ入りした。一方、島根・浜田高で甲子園8強入りしたのが和田毅氏だ。キャリアは違えど、2人はプロ1年目から新人王を獲得。松坂氏は日米通算で170勝。和田氏は同165勝を挙げ、長きにわたって野球界を盛り上げてきた。
「200勝達成できるように頼むよっていう言葉もかけていましたし。正直、もっとプレーを続けていくのかなっていうのはありましたね。毅から電話がかかってきた時に、まさかそんな報告だとは微塵も思わなかったですね」
松坂氏のスマートフォンが鳴ったのは、昨年11月5日に和田氏の“現役引退”が発表される数日前のことだった。「まずは大ちゃんに言わなきゃいけないと思って……」。
昨年の晩秋。日本シリーズが終わり、各選手の去就が気になり始める時期だった。松坂氏が治療へ向かうため、コインパーキングに車を止めた瞬間にスマートフォンが鳴った。着信は盟友からだった。いつもと変わらない調子で「どうしたのー?」と出たが、松坂氏は胸に小さな引っかかりを覚えた。
「最初の間というか。『あれ、なんか嫌だな』って雰囲気はありましたね。毅もパッと言えないというか、言いづらそうな感じがあったので。その瞬間に“もしかして”とは思いましたね。現役続行とか来季の契約を結ぶっていう記事を見たあとだったので、もしかしたら違うのかなという思いもありましたね」
和田氏が誰よりも先に伝えたかった相手が松坂氏だった。「寂しさというか、悲しさっていうんですかね。アメリカ式に『引退おめでとう。最後まで腕を振り続けてくれてありがとう』と伝えましたけど……。最初は実感が湧かなかったですね」。
高校時代からレジェンドだった松坂氏にとって、和田氏はどんな存在だったのか。
「僕にないものを彼は持っていました。特徴のあるフォームもそうですし、バッターから見た球速表示以上に速さを感じる毅の真っすぐは僕になかった。彼みたいなストレートを投げられるようになるにはどうしたらいいのかなと観察していました」
2人の最初の対戦は2004年4月16日の西武ドーム。完封勝利を収めた松坂氏に軍配が上がった。「勝った試合はあまり覚えていなくて、負けた試合のほうが覚えていますね。毅が(アレックス)カブレラにとんでもないホームランを打たれたことだけは覚えています(笑)」。通算では7度投げ合い、4勝2敗と松坂氏が勝ち越した。だが、和田氏との投げ合いはいつも刺激的であり、学びの機会になっていたという。
和田氏は松坂氏のことを「太陽」と表現し、松坂氏は和田氏のことを「ライバル」だと語る。「現役をやめてから、今でもそうですけど、僕の中では強烈なライバル心を持たせてくれた。意識をさせてくれるピッチャーだったので、近くにいてくれて良かったなと思いますね」。柔らかな松坂氏の表情からは、尊敬の念が伝わる。その関係性はこれからも変わることはない。
2人が初めて出会ったのは、甲子園の開会式だった。松坂氏から見た和田氏は「よくいる好投手の1人」という印象だったという。「大学時代は後藤(武敏氏)だったり、立教の上重(聡氏)にも毅の話を聞いていました。近くなったのは(アテネ)オリンピックの時かな。その時にグッと距離が近くなったのを覚えていますね」。そこからは“毅”と“大ちゃん”で呼び合う仲になっていった。
和田氏の引退後、2人は春季キャンプが行われていた宮崎で食事をともにした。「毅はゴルフも『もう少し頑張るわ』って言っていましたね(笑)これからの野球界のために頑張らなきゃいけないねっていう話もしました。そういう意味でもこれから一緒に何かをやっていけたらいいですけどね」。プロ野球の歴史に名を残す“松坂世代”が一旦幕を閉じた。これからは違う形で、共に野球界を盛り上げ未来へと繋げていってほしい。
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(飯田航平 / Kohei Iida)