18歳の近藤健介は「噛みついていた」 上沢直之が見た強烈な姿…“同期”の特別な関係性

近藤健介(左)と上沢直之【写真:竹村岳、冨田成美】
近藤健介(左)と上沢直之【写真:竹村岳、冨田成美】

2011年ドラフトで同期入団…1度は離れ離れとなり福岡で再会「よろしく」

 今でも深い絆で結ばれている。1度は離れ離れになり、福岡で再会した。上沢直之投手と近藤健介外野手は、2011年ドラフトの同期入団。4位で横浜高から指名された近藤と、専大松戸高から6位で日本ハム入りした上沢。ホークスで再びチームメートとなった2人は、どんな関係性なのか。忘れられないのは、18歳の頃から示していた“意地”だ。

 近藤は2022年オフ、海外FA権を行使して日本ハムからホークスに移籍した。翌2023年、上沢はポスティングシステムを利用して海を渡った。昨オフに日本球界復帰、そして新天地を福岡に決めると、右腕から近藤に連絡した。「よろしくね」。交わした言葉は多くない。再びチームのために戦えることが、ただ嬉しかった。

 1993年生まれの世代。日本ハムに入団した同期&同学年には松本剛外野手や、ロッテの石川慎吾外野手がいる。高卒からプロの世界に飛び込み、今季が14年目を迎えた。「ファイターズ時代からずっと切磋琢磨していたので、嬉しいですよね。まだまだやれているのもそうですし、年に1回は絶対に集まります」と話す近藤にとっても、特別な存在だ。

 ホークスの2人は、「上沢」「コン」と呼び合う関係性。近藤も「また同僚になったのはびっくりしました。あいつもめちゃくちゃ真面目で、悩みすぎてしまうところもあるので。移籍したばかりで、気楽にできるようにやってほしいですね」と笑顔で話す。春季キャンプ中には食事にも出かけた。チームメートになったのは2022年以来3年ぶりだが、すぐ新天地に馴染むことができたのは、気心知れた盟友がいたからだ。

 同期の存在について上沢も「みんなキャラはバラバラですけど、出会った最初から仲はよかったですよ。今もプロ野球で(現役が)できているのは、ちゃんとした選手が周りにいたから。意識の高い選手に恵まれたので、感謝しています」と頭を下げる。中でも、2021年の東京五輪や、2023年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一を経験した近藤からは、常に刺激を受けてきた。

「常に僕ら4人の前を走ってくれていますよね。入ってきた時からすごかったですし、そのままずっと世代のトップでいてくれているので。それに負けないようにと思いながら、僕もずっとやってきました」

 特別な存在であることも「もちろんです」と頷いて認める。上沢が忘れられないのは、高卒1年目。芯を貫く近藤の姿だ。

「納得がいかないことは、噛みついていましたね。コーチに言われたことでも、納得ができなかったら『はい』とは言わなかったです、あいつは。ちゃんと『自分でこういうこと(狙い)があるから、こういうことをやっている』って。それは印象に残っています。なかなか1年目からコーチに噛みつける人はいないと思いますけど、それだけ信念を持っていたんですね。間違っていると思ったことは、絶対に言うっていう。それはすごいなと思います」

 2023年に本塁打&打点王、昨シーズンは初の首位打者にも輝いた。今や「現役最強打者」とも呼ばれる背番号「3」の“負けん気”は、18歳の頃から健在だった。近藤本人は「若かったです。もっと大人な対応もできました」と苦笑いする。「それもあって、いろいろと自分で考えられるようにもなりました。根本的に、ずっとやってきたのは自分自身じゃないですか。それを信じたい気持ちもありましたし、でも必要な技術もあったり……。そこの折り合いだったんじゃないですか」と懐かしそうだった。

 チームにとって、5年ぶりの日本一を目指す2025年。上沢が「人生、何があるかわからないですよね。まさかこういう形でまた一緒になるとは思わなかったです」と言えば、近藤も「切っても切り離せない4人ですし、何かと繋がるんじゃないですかね」とはにかんだ。“上沢とコン”が必ず、福岡を頂点に導いてくれる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)