捕手陣で今季初のフル出場…「ゲームセットまでマスクを」
正捕手争いが激化する中、渡邉陸にとって8日のロッテ戦(ZOZOマリン)は、特別な意味を持つものとなった。今季から加入した上沢直之投手が先発し、実戦で初めて顔を合わせた2人は、試合前から綿密なコミュニケーションを重ね、互いの意思を確認し合った。
「真っすぐをしっかり投げたいっていうのと、あとは色々な球種を使っていこうっていう話はしていましたね」。渡邉は右腕の意向を尊重しつつ、自身のリードを織り交ぜ、試合を組み立てていった。4回まで投げた上沢は3安打1失点で降板。開幕ローテーション入りを手中に収めた。
この試合で最後までマスクを被った渡邉は、5人の投手をリードし、計10安打を浴びながらも4失点に抑えた。「要所では粘れたところもあったし、失点した場面での反省もあったので。ものすごく勉強になった」と試合を通して技術的な面で多くの学びを得た。だが、何よりも再確認できたのは、自身の“気持ち”だった。「勝てるキャッチャーになりたい」――。
「いやー、楽しかったですね。実戦で初めて(上沢と)組んで。日本ハム時代に投げていたのも見ていたので、こういうピッチャーだというイメージも今日である程度つかめましたし、もう1回組んでみたいですね」
NPB通算70勝を誇る上沢とのバッテリーを組んだ印象を、晴れやかな表情で語る。4回の1死三塁の場面では、上沢の得意球であるカーブを決め球に要求し、打者を三振に仕留めた。さらに、バッテリーエラーの隙を突こうとしてリードが大きくなっていた走者を刺し、三振ゲッツーでピンチを切り抜けた。
「アウトにしてくれたんで『ありがとう』っていう気持ちです。それもあったし、僕も試合前にしっかり会話して、こういうふうに投げたいっていうのがあったので。その中で僕の良いボールをチョイスしてやってくれたおかげです」と上沢。ベンチに戻る際には、お互いを指差し、称え合う姿があった。2人の間に確かな信頼関係が生まれたことを物語っていた。
正捕手争いにも注目が集まる中、捕手陣で最初にフル出場を果たしたのは渡邉だ。「シーズン中もゲームセットまでマスクを被りたい気持ちがあります。試合が終わった時の気持ちというか、そういったのもやっぱりいいなって思うんで」。扇の要としてチームを勝利に導きたい。その強い思いを再確認できたことが、何よりの収穫だ。その思いが渡邉を正捕手へと近づける。
6回の2死満塁のチャンスでは初球を振り抜き、2点適時打も放った。「勝てるキャッチャーになるためにも、やっぱり最後まで試合に出たい。長く試合に出られれば、打席も1打席多く立てたりすると思うんで」。力強い口調で話す渡邉。本格化していく正捕手争いの中で、“大切なこと”に気づいた試合になった。
(飯田航平 / Kohei Iida)