「全然物足りひん」 斉藤和巳3軍監督が苦言連発も…新人2人を絶賛、驚愕した“度胸”

笑顔の斉藤和巳3軍監督【写真:上杉あずさ】
笑顔の斉藤和巳3軍監督【写真:上杉あずさ】

「筑後に残った他の選手にもいい影響はめちゃくちゃ出ています」と実感する若手積極起用の今春キャンプ

 鷹フルでは、斉藤和巳3軍監督の単独インタビューを行いました。4軍監督を務めた昨季に続き、筑後の若鷹たちを預かる2年目のシーズン。C組キャンプが行われた2月を振り返り、斉藤3軍監督が感じたこととは――。「全然物足りひん」。厳しい指摘と、球団への感謝を語りました。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 筑後で過ごす2年目の春、斉藤3軍監督は若鷹たちに熱い檄を飛ばしてきた。役職こそ変わったが、「今のところ別に変化はないかな。対外試合が始まっていくこれからだろうね」と見据える。4軍は試合の数自体が少ないが、3軍は定期戦を行う四国をはじめ、九州内、時には関東遠征もある。ほとんどがバス移動で、首脳陣にとっても過酷なシーズンが待っている。2月28日の練習を締めくくると、鹿児島へ向かい、大学・社会人との交流戦「薩摩おいどんリーグ」に参戦。3軍のシーズンが一足先に始まった。

 2月はファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」で、C組キャンプの指揮を執った。新人では庄子雄大内野手がA組スタート。岩崎峻典投手、育成の大友宗捕手、川口冬弥投手、岡田皓一朗投手がB組入りした。それ以外、筑後で球春を過ごした13人のルーキーに斉藤3軍監督は「楽しみな選手が多い」と頷く。一方で、声を大きくしながら“苦言”を口にした。

「動き自体には問題はないんやけど、元気はない! おとなしいじゃない、正直おとなしすぎる。去年と比べても全然、物足りひん。去年はここまで思うこともなかったけど、今年は特にピッチャーなんて、新人選手はちょっと別でやるメニューが多いから仕方ないところもあるけど、どこで何しているのかも、俺には分からんくらい静かやね」

 高卒など、体作りが優先される選手は個別練習にも制限がある。目立つことが少なかったとはいえ、物足りなさは否めなかった。

 1人1人の選手に目線を移せば、期待感が膨らんでいる。「石見(颯真)と宇野(真仁朗)。2人はやっぱり支配下で指名されるだけのものはあるなと思いました。今年の野手に関しては、育成も含めて楽しみな選手は多いなと。ピッチャーはまだ実戦に入っていないし、まだ投げさせていないところもあるからこれからだけどね」。早実高出身の4位・宇野、愛工大名電高出身の5位・石見は、打撃面で非凡なセンスを披露していた。現役時代、通算79勝を挙げた指揮官の目にもしっかりと止まった。

 いきなり結果を残したのが、石見だ。2月24日の西部ガスとの一戦では、筑後の新人1番乗りで“プロ初安打”を放つと、すぐに盗塁も決めた。「試合前に『緊張しているか?』と確認したら、『しています』と言っていた中で、ああいう対応ができる。打つ方もだけど、スチールのスタートの切り方も彼の持っている野球センスなのかもしれない」と絶賛だ。その後、26日からは宮崎に呼ばれ、A組の練習試合にも出場。いきなり2安打1打点と、存在感を見せつけた。

 チームとして、今春キャンプで初めて導入されたS組制度。主力選手に調整を一任するという試みは、C組のモチベーションにも繋がっていた。斉藤3軍監督は、球団の意図にも感謝を込める。新人たちも、2年目以降の選手たちにも、意識の変化という好影響を与えていたからだ。

「今年は1軍の小久保(裕紀)監督をはじめ、各コーディネーターの方が、昨年まで3、4軍にいた選手を宮崎のメンバーにスタートから入れてくれたり、途中で入れ替えてもらったり、そういうことを積極的にやってくれた。筑後に残った他の選手にもいい影響はめちゃくちゃ出ています。悔しそうな顔をする選手もいますし、言葉に表さなくても行動に出ていたり、なにか感じるものがあるので、そういうきっかけを作ってもらえているのは、ファームを預かるこちらとしてもすごくありがたい」

 若鷹の間で、きっと相乗効果は生まれるはず。宮崎に行けた選手も、筑後に残った選手も、狭き枠を奪い合う競争相手だ。「どう思っているのか、ですよね。それを悔しく思って、その気持ちをどうぶつけるのか。心が動かなければちょっと問題だけど、どういう内容であれ、ここにいる選手たちの心が、彼らの頑張りで動いてくれたら」。ここから始まる新たなシーズン。未来を見据える斉藤3軍監督の表情は、充実感に満ちていた。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)