前田悠伍はなぜ2軍降格? 突きつけられた“リアル”…倉野コーチが明かした判断の舞台裏

前田悠伍(左)と小久保裕紀監督【写真:竹村岳】
前田悠伍(左)と小久保裕紀監督【写真:竹村岳】

4日のヤクルト戦は1回無安打無失点も…「悔しさバネにもう1度戻ってくる」

 19歳に突きつけられたのは紛れもない“リアル”だった。「悔しさはありますけど、やるしかないので。次にまた呼ばれるようにしっかりと悔しさをバネに変えてやれたらいいなと思います」。前田悠伍投手が5日から2軍に合流することが決まった。

 4日のヤクルトとのオープン戦(みずほPayPayドーム)。9回のマウンドに上がった左腕は1イニングを無安打無失点と好投したが、試合後に小久保裕紀監督が口にしたのは非情な現実だった。「あしたからファームです。開幕ローテ(の争い)からは外れます」。春季キャンプのスタートからA組に帯同していた前田悠の開幕1軍は事実上なくなった。

「前々から言われてはいました。それでもしっかり投げるというのは変わらないので」。気持ちを切らすことなく、左腕を振った19歳。開幕まで3週間ほどの時期に決断を下した理由は何だったのか。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)に思いを聞いた。

「全体的にスケールを大きくというか。全体的に力をつけないと、ということですね。力がまだ足りない? もちろんです」。

 開幕ローテ争いから外すことを前田悠に告げたのは「キャンプの終わりくらいですね」という。「現状、開幕ローテに入るのは難しい。もう一度力をつけて1軍のローテに入れるようにしてくれ」と伝えたという。

 左腕の受け止めは前向きだった。「球速を上げるのと、ウエートで体づくりをしっかりすること。1段階、2段階とレベルを上げて、また1軍の舞台に戻ってこられたらいいなと思います」。落ち込むそぶりを見せることなく、成長を誓っていた。

 前田悠は今オフ、メッツの千賀滉大投手と短期間の合同トレーニングを実施。さらにカブスの今永昇太投手とともに自主トレも行った。世界で戦う大先輩から貴重な言葉をもらい、本気で開幕ローテ入りを目指していた。

 1年間先発ローテを守るという大きな目標は実現することが難しくなった。それでも、まだまだシーズンは始まってもいない状況だ。悔しさを糧にして、一回り大きくなった姿で1軍に戻ってきてみせる。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)