昨シーズンから感じていた「これくらい対応できるんだ」
奈良原浩ヘッドコーチが1か月にわたる春季キャンプを総括した。今回は初めてS組を設けたことが特徴だった。「普段は長く見ることができない若い選手を重点的に見ましょう、というところから始まりましたね」。若手選手は日替わりでA組の練習や試合に参加。アピールする場所と機会が生まれたことが大きなメリットとなった。
そんな中で、今宮健太内野手と川瀬晃内野手が怪我による離脱を余儀なくされた。今宮は昨季133試合に出場し、4度目のベストナインにも輝いた。当然今季もレギュラーとしての活躍が期待される。川瀬も105試合に出場し、昨季は主に二遊間を守ることが多かった。そんな2人が開幕に間に合わなかった場合、首脳陣はだれがその穴を埋めると考えているのだろうか。「二遊間の選手は、たくさんは出てこないから」。奈良原ヘッドコーチが考えを明かした。
今宮と川瀬がリハビリ組に合流したあとは、主にジーター・ダウンズ内野手と、ドラフト2位ルーキーの庄子雄大内野手が遊撃のポジションを任されてきた。ダウンズは昨シーズンの途中に加入し、9月25日に1軍出場を果たした。日本シリーズでは先発起用されるなど、攻守において対応力の高さを見せつけた。奈良原ヘッドコーチも「これくらい対応できるんだ、というのが自分たちの中ではあった」と、そのポテンシャルの高さに手応えを感じていた。
「特に打つ方ですかね。フォアボールも取れるじゃないですか。脚力がある選手なので、フォアボールを取って塁に出るっていうのは彼の大きな武器になる」
ダウンズの魅力を奈良原ヘッドコーチはこう分析する。打つことはもちろんだが、選球眼の良さで四球を取ることができるのも特徴の1つ。高い出塁率を残すことで走力を最大限に活かすことができるからだ。チャンスを広げる役割と、得点を奪う可能性を高めること。それが攻撃面においてダウンズが期待をかけられる理由の1つでもある。
守備に関しては、春季キャンプ前には二塁での起用も視野に入っていたが、「どこを守るというよりは、二遊間どちらも守れるようにしておいた方が試合に出られるというのがあるので。両方見ながら最終的にどこにするかっていう判断にはなるかなと思っていました」。今宮と川瀬の離脱後に、柔軟に対応した守備面も評価される理由になっている。
新人の庄子については「まずはプロのスピードに慣れていくことですね」と、プロの投手への対応を1つの課題に挙げた。さらに「相手の打者もそう。これから日を追うごとに1軍のスピードだったり、打球の速さが出てくると思うので、これからじゃないかなと思いますね」と話す。春季キャンプの実戦では、まだまだ相手も調整段階。本当のプロのスピードを体感するのはこれからだと感じている。そこにうまく対応するかは庄司次第だが、その片鱗は十分にアピールすることができていた。
二遊間は、チームにとって重要なポジションであり、選手を育てるにも時間がかかる。それだけに、すぐさま代役を務める選手が出てこないのも現状だ。奈良原ヘッドコーチ自身も現役時代には守備を売りにしてきた選手だからこそ、難しさを理解する。だからこそ、「二遊間の選手は、たくさんは出てこないから、期待値は高いですよね」。ダウンズと庄司には大きな期待がかけられている。
今宮と川瀬の不在はチームにとって痛手ではあるが、若手選手らにとっては大きなチャンスにもなる。開幕に向けたカウントダウンが始まる中で、その穴をだれが埋めるのか。今後の活躍に注目したい。
(飯田航平 / Kohei Iida)