2020年育成ドラフト5位で入団した。昨年2月の春季キャンプでA組に抜擢されると、3月19日に支配下登録された。1度も登録抹消されることなく、86試合に出場。打率.173、0本塁打、4打点、4盗塁と結果は満足いくものではなかったが、主に代走・守備固めとして数字以上の貢献ぶりを示した。背番号は「57」となり、地元・宮﨑でのキャンプに帰ってきた。開幕1軍入りに向けても「ここからは去年と一緒です。もう1回、がむしゃらにやります」と鼻息は荒い。
「もちろんです。大切なものだと思うし、今年の方が不安です。去年は1年間1軍にいたけど、今年はわからない。不安の方が強いから練習もしないといけないし、結果も欲しいと思っています。支配下選手としての目でも見られると思うので」
昨年は毎日が必死だった。今年は2桁を背負っていることで、周囲からの見られ方も違う。2024年シーズンは1軍にフル帯同したが、今キャンプは横一線から開幕1軍入りを目指す競争だ。「役割は違うかもしれないですけど、いい選手ばかりなので、負けていられないです」。静かな口調からも、自信は伝わってくる。「どの立場で試合に出るのか、ある程度わかった。去年みたいな使われ方になった時に、そこの練習もしておかないといけない。途中から行くことを頭に入れて、練習しているところです」と頷いた。
持ち味が発揮されたのが22日、オリックスとのオープン戦(アイビースタジアム)。8回1死から代走として出場すると、難なく二盗を決めた。小久保裕紀監督も「あの場面、あのクイック、あのカウントでフォークがあるところでスタートを切れる。ああいう狙いがあって代走で出している中、成功を収めるのは非常に評価できる」と大絶賛だった。掴みたいのは、スタメンの座。一方で、途中出場からでも重要なピースになれることが、自分の強みだ。
「だから特守も多くやっていますね。いつでも、いける準備はしていますし、そういう意味でも去年の経験はすごく大きかったです。1軍でほとんどのことを経験させてもらって、本当にがむしゃらでした。わからない状態だった中で、今年はやらないといけないことがわかっていますから。今年はもっといい準備ができると思う。選択肢が増えたというか、そういうことがすぐにできるようになったかなと」
野球漬けの生活を送る2月。ショートスリーパーを自称する緒方は午前6時に起き、寝るのはいつも日付を跨いでからだ。「朝起きたらご飯を食べて、お風呂入って、歯磨きとかも終わらせて、アーリーワークを毎日していたので、早めのバスに乗る。みんなと練習して、夕方くらいにホテルに帰ったら湯船に浸かって、ご飯を食べて、自分でマッサージとかストレッチとかして、寝る感じです」。毎日がこの繰り返し。取り組みが安定しているのも、自分らしさの表れだった。
「こだわりが強い方で、同じことをしないと気が済まない性格なので。何気ないルーティンが多いです。お風呂と歯磨きとか、どっちかの順番が逆になるのも嫌なんです。この時間にこれ、ってルーティンがありますね。風呂も絶対1日2回です。めっちゃ決まっています」
まだ育成だった昨年。ランニング場や室内練習場の間を移動していても、ファンから声をかけられないことは何度も経験した。時には、他の選手とも間違えられたが「それはなくなりましたね」と語った。掴みかけている自分だけのポジションは、絶対に手放さない。