育成時代より「不安が強い」 支配下との“違い”…緒方理貢の胸中「今年はわからない」

緒方理貢【写真:冨田成美】
緒方理貢【写真:冨田成美】

昨年3月19日に支配下登録…開幕1軍入りに向けて「もう1回がむしゃらに」

“1軍の雰囲気”を、身にまとい始めた。緒方理貢外野手は、支配下登録されて初めての春季キャンプ。手締めも終えてオープン戦もスタートした中、「まだわからないですね。試合が始まって、結果を出していくというのが一番です」と話した。絶対に忘れてはいけない育成時代の気持ち。現在の心境についても「今年の方が不安です」という。

 2020年育成ドラフト5位で入団した。昨年2月の春季キャンプでA組に抜擢されると、3月19日に支配下登録された。1度も登録抹消されることなく、86試合に出場。打率.173、0本塁打、4打点、4盗塁と結果は満足いくものではなかったが、主に代走・守備固めとして数字以上の貢献ぶりを示した。背番号は「57」となり、地元・宮﨑でのキャンプに帰ってきた。開幕1軍入りに向けても「ここからは去年と一緒です。もう1回、がむしゃらにやります」と鼻息は荒い。

 同じタイミングで2桁を勝ち取った川村友斗外野手は「去年は育成で、必死こいて1か月を過ごしていました。今年は逆に、変なことをしたらそれこそ評価にも関わってくる」と語っていた。緒方も「それはもちろんです。川村と同じような気持ちでやっています」と同調する。育成だった時の熱量は、絶対に失ってはいけない。

「もちろんです。大切なものだと思うし、今年の方が不安です。去年は1年間1軍にいたけど、今年はわからない。不安の方が強いから練習もしないといけないし、結果も欲しいと思っています。支配下選手としての目でも見られると思うので」

 昨年は毎日が必死だった。今年は2桁を背負っていることで、周囲からの見られ方も違う。2024年シーズンは1軍にフル帯同したが、今キャンプは横一線から開幕1軍入りを目指す競争だ。「役割は違うかもしれないですけど、いい選手ばかりなので、負けていられないです」。静かな口調からも、自信は伝わってくる。「どの立場で試合に出るのか、ある程度わかった。去年みたいな使われ方になった時に、そこの練習もしておかないといけない。途中から行くことを頭に入れて、練習しているところです」と頷いた。

 持ち味が発揮されたのが22日、オリックスとのオープン戦(アイビースタジアム)。8回1死から代走として出場すると、難なく二盗を決めた。小久保裕紀監督も「あの場面、あのクイック、あのカウントでフォークがあるところでスタートを切れる。ああいう狙いがあって代走で出している中、成功を収めるのは非常に評価できる」と大絶賛だった。掴みたいのは、スタメンの座。一方で、途中出場からでも重要なピースになれることが、自分の強みだ。

「だから特守も多くやっていますね。いつでも、いける準備はしていますし、そういう意味でも去年の経験はすごく大きかったです。1軍でほとんどのことを経験させてもらって、本当にがむしゃらでした。わからない状態だった中で、今年はやらないといけないことがわかっていますから。今年はもっといい準備ができると思う。選択肢が増えたというか、そういうことがすぐにできるようになったかなと」

 野球漬けの生活を送る2月。ショートスリーパーを自称する緒方は午前6時に起き、寝るのはいつも日付を跨いでからだ。「朝起きたらご飯を食べて、お風呂入って、歯磨きとかも終わらせて、アーリーワークを毎日していたので、早めのバスに乗る。みんなと練習して、夕方くらいにホテルに帰ったら湯船に浸かって、ご飯を食べて、自分でマッサージとかストレッチとかして、寝る感じです」。毎日がこの繰り返し。取り組みが安定しているのも、自分らしさの表れだった。

「こだわりが強い方で、同じことをしないと気が済まない性格なので。何気ないルーティンが多いです。お風呂と歯磨きとか、どっちかの順番が逆になるのも嫌なんです。この時間にこれ、ってルーティンがありますね。風呂も絶対1日2回です。めっちゃ決まっています」

 まだ育成だった昨年。ランニング場や室内練習場の間を移動していても、ファンから声をかけられないことは何度も経験した。時には、他の選手とも間違えられたが「それはなくなりましたね」と語った。掴みかけている自分だけのポジションは、絶対に手放さない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)