手ごたえを掴んだのは20日…コーチ&スタッフからも「よかったと言われた」
リニューアルした「鷹フルリレーインタビュー」。テキスト方式で、選手の心境に迫っていきます。今回は、板東湧梧投手の登場です。昨季1軍登板なしに終わり、B組スタートとなった今春キャンプ。首脳陣が語った現状と、“逆襲”にかける思いを語りました。「挫けそうになったり……」。乗り越えようとしている不安と怖さ、そして自分を突き動かす思いとは?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「神経学」にヒントを見出し、1月は大阪で自主トレを行なった。ユニホームを着て、競争が本格化するのが春のキャンプ。感覚をすり合わせる作業に、今月上旬は「難しいです」と語っていた。「よくはなってきていると思います。進んできているので、気持ち的にもいいですね」と、表情は前を向くようになってきた。
手ごたえがあったのは、20日だ。ブルペン投球を終えると、個別練習でも再びブルペンへ。「何人かのコーチにも『よかった』と言われましたし、受けたキャッチャーにも言われたので。個別の時間でやっていることが繋がっている感覚があります」と頷いた。夕方になれば、とにかく傾斜を使って動作を確認。コーチ陣やブルペン捕手が見守る中心に、板東がいる。そんな光景も見慣れてきた。この日、バスに乗ったのは午後6時。アイビースタジアムを出発する“最終便”だった。
必死なぶんだけ、野球に費やす時間も自然と長くなる。2月は毎朝午前6時起き。散歩をして朝食を済ませると、アーリーワークから練習に入っていくというルーティンだ。「投げる時間が多くなりましたね。力が入る捉えどころというか、なんで力が入らなかったのか、がわかってきた。原因がハッキリ見えてきたのが一番です」と、少しずつ感覚の輪郭が見えてきた。
すでに実戦がスタートし、育成の藤原大翔投手、新人の岩崎峻典投手らがA組のマウンドを経験するなど、投手陣も活発になってきた。板東は、23日にB組でライブBPを行う予定。今年の自分自身の大きなテーマが「わがまま」で、調整についても「自分が進むべき方向に対してやらせていただいています」とマイペースを崩さない。焦る気持ちもあるからこそ「自分が成長するためにどうするか、だけを見ています」と足元を見つめていた。
一方で当然、時間は待ってくれない。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は、右腕についてキッパリと言及する。「今必死で取り戻そうとやっている最中。まだ自分の球を取り戻せていないし、正直、遅れているのは事実です」。2月中に「悪い評価はしない」と言っていただけに、口にしたのは、あくまでも事実であり現状だ。「試合(登板)もそうですし、ライブBPもまだですからね」。厳しい言葉は期待の裏返しでもある。板東の“いい時”も知るからこそ、一緒にヒントを探す日々だ。
「一気に(競争で)ゴボウ抜きするだけの可能性はありますよ。確かに(球速などの)最低ラインはありますけど、150キロを超えることだけが全てではないし、(板東は)それ以外の勝負できる武器は持っています。コントロールとか緩急とか、持っている投手なので。(求める要素は)スピードありきではないです」
昨シーズンは、1軍登板なし。12月の契約更改の場では、どんな結果になろうと「野球は続けると決めていた」と宣言していた。とにかく投げまくり、野球に時間を費やしている2月。もう1度晴れ舞台で輝きたいという気持ちは行動にも表れている。何度も繰り返すのは、自分のことだけに集中するという思いだ。
「それはもちろん、イメージしていたのは、(キャンプインから)もっとスタートダッシュを切るって未来でしたけど。そうじゃない時に挫けそうになったり、こんな苦しいことを1年間続けられるのか、不安になったりもしたんですけど、そういう怖さは1回排除して、自分が何をやるべきかにフォーカスしているので進めているかなと思います。あとは、単純に自分のパフォーマンスを上げる。これだけに集中できれば、自ずと結果はついてくるのかなと思います」
必ず活躍してみせる。プロ野球選手としては当然であり、絶対に失ってはいけない気持ちだ。「終わりたくないですね。見栄とかそういうのじゃなくて、一人の選手として野球が好きだからです。野球が楽しいって感情をもう1回、掴みたいです」。自分にわがままに。板東湧梧の目には、熱い闘争心が宿る。
(竹村岳 / Gaku Takemura)