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まだまだ“先の話”であることは間違いない。それでも、野球選手にとって避けては通れない道だ。プロ13年目の昨季、シーズン終盤に右足首を捻挫した。感じたのは体の変化だった。「今まではちょっと休んだら、すぐに自分のイメージしいてる全力が出せていましたけど。なんか違うなと。感覚のズレや、それが戻るまでのスピードの変化は感じますね」。
2023年シーズンは本塁打、打点のタイトルを獲得。昨季は首位打者、最高出塁率に輝き、シーズンMVPにも選出された。数字上で見れば、選手としての「ピーク」を迎えている近藤が考える現役引退の理想形とは、どのようなものなのか。
「うわー、どうですかね。そうなってみないと分からないですけど……」。そう口にしつつ、続けた言葉から感じられたのは“家族愛”だった。
「例えば40歳までやりたいとか、そういう感じではないですかね。やっぱり子ども次第。『一緒に遊んでよ』って言われたら、やめるかもしれないです。そこはデカいかなと思いますね」
2020年3月に第1子となる女児を授かると、2023年8月9日には双子の女児が誕生した。この日は近藤にとって30歳の誕生日でもあった。「もう僕の誕生日は祝われないでしょうね」。ホークスへの移籍1年目に訪れた幸福を満面の笑みで喜んでいた。「僕が野球をやっていることを子どもたちが覚えてくれるまでは続けたいですね」。父としての責任感を口にする。
さらに明かしてくれたのは、ほほえましいエピソードだった。「ドラマとか映画を見ても、泣くことが全然ないので。いつも妻には『心あんの?』って言われますね」。最後に涙を流したのは6年前、2019年に行われた日本ハム・田中賢介さんの引退試合だったという。「その時はウルッてきましたね。すごくよくしてもらったので。でも、それ以降は全くないです」。
自宅にいる際は常に明るいという近藤。「シーズン中、たまに帰っても子どもたちは僕がいるといい子らしいので」。グラウンド上で見せる勝負師としての表情とは正反対の笑みを浮かべる。天才打者のキャリアは家族次第——。最愛の存在を笑顔にするため、これからもバットを振り続ける。