「パナマ運河」パフォ、誕生の秘密 ファンから厳しい指摘も…ズレータ氏の“愛情表現”

「パナマ運河」パフォーマンスを披露するフリオ・ズレータ氏【写真:上杉あずさ】
「パナマ運河」パフォーマンスを披露するフリオ・ズレータ氏【写真:上杉あずさ】

地元に寄り添いたい…街の声にも耳を傾けたズレータ氏のパフォーマンス

 鷹フルがお送りするフリオ・ズレータ氏の単独インタビュー。2003年シーズン途中に当時のダイエーに加わった助っ人がチームメートにもファンにも愛された大きな理由。それが、本塁打パフォーマンスの「パナマ運河」でした。自身の“代名詞”は、どのようなきっかけで誕生したのでしょうか?

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 2003年6月、当時のダイエーに入団したズレータ氏。在籍した計4シーズンで454試合に出場し、122本塁打、333打点を記録した。残した成績はもちろん偉大だったが、本塁打を放った際の「パナマ運河」パフォーマンスが、多くのファンに愛された理由だ。“代名詞”と呼ぶにふさわしいパフォーマンスは、一体どうやって生まれたのか。19年の時を経て、誕生秘話を明かした。

 加入1年目の2003年。チームは3年ぶりのリーグ優勝を果たした。阪神との日本シリーズでズレータ氏は第1戦でサヨナラ打、第2戦でも3ランを放つなど、勝利に大きく貢献。結果的に4勝3敗で日本一まで駆け上がり、インパクトを刻み込んだ頂上決戦となった。

 最高の経験をしたズレータ氏は考えた。ホークスでの2年目は、もっとファンと一緒に喜びを分かち合いたい。「何かモチベーションになるようなことがないかな、と考えていました。ホームランを打ったときに自分自身も盛り上がるし、みんなにも喜んでもらえることがないかなと……」。思いついたのが「パナマ運河」だった。

 当時の担当通訳に「“パナマカナル”を日本語にしたら、何って言うの?」と聞いてみると、それが「パナマ運河」だと教えてもらった。自身の母国・パナマ共和国の象徴でもあるため、「弱々しさがあってはダメ」と刀を振り下ろすような手の動きを取り入れ、力強さを表現。さらに「そこに地元の言葉である『よかろうもん』をくっつけました。あと、『福岡、最高ばい』とか。いくつかパターンがありました」と笑って振り返る。

 周囲を楽しませたいという思いはまさにエンターテイナーだ。ファンを愛し、愛されるためにも、地元に寄り添うことを強く意識。“街の声”にも耳を傾けた。「ファンの皆さんから、福岡でプレーしているのに『よかろうもんも知らないのか』と言われたことがあったので、その意味を確認して、喜んでもらうために『よかろうもん』を入れてみました」と明かす。言われたことをすぐに調べて、取り入れる。ズレータ氏の実直さも表れているやり取りだ。

 ある日、食事に出かけた時には、こんな声をかけられた。「中洲のことは触れてくれないの?」。ズレータ氏はすぐに対応し「中洲、最高ばい!」と言ってみせた。そのファンに再び会った時には「本当に言ってくれたね」と感謝されたという。地元の方々とのやり取りも、自身にとっては大切な思い出だった。「彼らのことが大好きです。そうやって応えることが、僕がファンの皆さんにお見せできる感謝だと思っていたので」。支えてくれる人を喜ばせる。そんな気持ちがいつも、ズレータ氏のモチベーションだった。

 福岡への愛着は今も変わらない。「できることならホークスで永遠にプレーしたかった」という当時の思いを抱いたまま、今回は臨時コーチという形で恩返しすることになった。一時的ではあるが、念願だった“復帰”を果たして「ホークスから離れたくない」と、さらに思いを強くする。3月23日に開催されるOB戦にも出場予定。そこで「パナマ運河」を披露できれば、最高の瞬間になるに違いない。

(上杉あずさ)

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)