鷹フル単独インタビュー…プロ10年目「節目の年に大チャンスが来た」
プロ10年目となる2025年。最大のチャンスが舞い込んできた。谷川原健太捕手は「節目の年に大チャンスが来たので、本当にここを掴んでやるぞっていう強い気持ちが1番あります」と覚悟を込める。2軍生活も長く、苦悩を味わった2024年。決意を新たにしたのが、小久保裕紀監督の言葉だった。鷹フル単独インタビューで、胸中を赤裸々に語った。
絶対的な存在として君臨していた甲斐拓也捕手が、FAで巨人に移籍した。ネットニュースで一報を知った谷川原は「衝撃的でしたね」と先輩の決断に驚いたという。同時に「自分が次の正捕手になるっていう気持ちがそこで湧きました」とすぐ誓いを立てた。「もちろんすごくお世話になりましたし、学ぶものはたくさんありました。野球人としてすごく感謝しています。ただ、チャンスが大きくなったなっていうのは、率直に思いました」と本音をこぼす。
2024年は、シーズンのほとんどを2軍で過ごした。2軍戦では捕手陣の中で最も多くマスクをかぶり、ベテランとも若手ともバッテリーを組みながら、経験値を積み上げた。昨年7月、海野隆司捕手が脳震盪の疑いのため、一時的に1軍に合流した時。登録はされなかったが、小久保監督からこんな声をかけられたという。
「しっかり2軍で試合に出続けて、体力をつけるように」
外野手としての守備力と走力を兼ね備えている27歳。自身のユーティリティ性を生かし、6年目の2021年に初めて1軍出場を果たした。そこから3シーズン、1軍での出場はほとんど「外野手として」だったが、昨季から“捕手1本”で勝負することを決断。指揮官も「キャッチャーで拓也(甲斐)と勝負しろとハッキリ伝えた」と話していた。谷川原も「とりあえず育てるというか、『1年目だから経験させる』みたいな感じでは言われました」と小久保監督からの言葉を振り返る。
そんな首脳陣の思いがあったとはいえ、2024年は厳しい1年だった。2軍で過ごす毎日は「(シーズンの)最初の方は結構苦しくて……」と明かす。あまり表情には出さないが、1軍昇格の光が見えず、悔しさで胸の内はいっぱいだった。
自分自身に黙々と向き合う中で、心境の変化もあった。「中盤から後半にかけては、『1軍に上がりたい』っていう気持ちでやっていても成長しないなと思ったんです。1年でも長く大好きな野球がやりたいので、そのために何をしたらいいんだろうっていうメンタルでやり始めたら、苦しいこともなくなりましたね」。後半戦は打撃も好調で、9月25日には念願の1軍昇格。「そこからいろいろといい方向に動きました」と前向きに取り組めたことで、心身ともに成長できた1年となった。
シーズン中とは違って、オフになると選手と首脳陣が会う機会は極端に少なくなる。12月17日に甲斐の巨人入りが発表され、その数日後。谷川原が、小久保監督と顔を合わせた時があった。「お疲れさまです」。すぐに自ら挨拶に行くと「目の色が変わったね」と言われたという。「嬉しいですよね。そこでさらにやる気が出ました」と胸が熱くなった。2軍生活が長くとも、やるべきことを絶対に怠らなかった。自分の努力と準備を指揮官が見ていてくれたことが、何よりも嬉しかった。
今季のホークスにおいて、最もカギを握ると言っても過言ではない“正捕手争い”。谷川原の他にも当然、候補はいる。それぞれが虎視眈々とその座を狙っているが、見つめているのは足元だけだ。「(記事や情報が)目に入ったら見ますけど、自分から調べて見たりはしないですね。そこを意識しても、自分のパフォーマンスは上がらないなっていう思いはあるので、自分のことに集中したいです」と冷静さを貫く。
昨年と同様、1月からは大牟田市で自主トレを行っている。楽天の安田悠馬捕手と励む日々で「やりたい練習もできますし、僕にはすごくプラスに働いています」。以前は柳田悠岐外野手に弟子入りしていた2人。他にも愛知大出身の安田は、谷川原の地元である豊橋市で4年間を過ごすなど、共通の知人も多く、繋がりが深いことが大きな理由だ。「いろいろ野球に繋がるトレーニングも教えてもらいますし、バッティング中も後ろからボソボソとアドバイスをくれるので、すごくいい関係だと思います」と充実感を語る。
2月1日のキャンプインから捕手の座を争うバトルが始まっていくが、谷川原の本音は「1年でも長く大好きな野球がやりたい」――。節目のシーズンだからこそ「10年がたちましたけど、40歳までやりたいのであと13年です」と目を輝かせた。2025年は、まだまだ通過点だ。「このオフにやってきたことや、去年やってきたことを発揮していきたいと思います」という強い覚悟を胸に、このチャンスをものにしてみせる。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)