「名前が上がらなかった悔しさはもちろんあります。でも……」。続けて左腕が口にしたのは、自覚とプライドだった。「この3年間、100イニング以上投げているというのは自分の中でもいいことだと思っているので。アピールするのは当たり前ですけど、シーズンが開幕した時にしっかりとした投球ができる準備を進めるのを念頭に、キャンプを過ごしたいですね。自分の投球ができれば入れるんじゃないかとは思っています」
開幕ローテをめぐる競争は熾烈を極めそうだ。昨季7勝を挙げた大津亮介投手、通算72勝をマークしているベテランの東浜巨投手、2023年ドラフト1位の前田悠伍投手らが、その座を虎視眈々と狙う。さらに上沢、浜口、上茶谷がホークスに加入。小久保監督は新戦力の3人を先発として考えていることも明言している。
「チームとしては、やっぱりいい投手が多くいることはプラスだと思うので。リーグ優勝する確率が高まってくれたらいいなっていう気持ちと、個人としては先発ローテの数には限りがあるので。メンバーが増えた分、より気を引き締めてという感じですかね」。大関の受け止めはあくまで冷静だ。
6年目の今季、自身初の2桁勝利を狙う大関にとって“悩み”が消えたことも大きい。「最近なって、ちょっとわかってきたので……」。そう語るのは、体重減少の原因だった。昨年から20キロ近くも落ちてしまい、「不安は大きかった」と明かした左腕。見つめ直したのは食生活だったという。
「元々ちょっと神経質な部分があって。2年前に精巣がんと診断されて、発がん性物質が含まれている食品をほとんど摂らなくなってしまったんです。もちろん食べ過ぎるとよくないんですけど、食べなさ過ぎるのもよくないなって。それによって体の脂肪がどんどん落ちていった感じです」
具体的には牛肉や豚肉といった赤身肉を避け、鶏肉や魚ばかりを食べていたという。「今も定期的に病院には通っていますし、今は摂取する量にだけ気を付けて食べているますね」。20代半ばにして重病を患ったことへの不安は消そうにも消えるわけではない。それでも自らの体と相談しながら、再びシーズンを戦い抜く体づくりを進めているところだ。
「現時点で開幕ローテに入っていないのは、単純に監督の評価だと思っています。しっかりとした姿を見せて、信頼を勝ち取っていくしかない」。ライバルたちと正々堂々ぶつかり、まっさらなマウンドに立つ——。環境が変わっても、大関友久は変わらない。