50メートル5秒7の俊足も…際立つ走塁センス「教えてできない“感性”」
2024年ドラフトで支配下選手6人がホークスに加わりました。鷹フルでは将来を担うルーキーズを全6回にわたって紹介します。第2回は横浜高、神奈川大を経てドラフト2位で入団した庄子雄大内野手です。恩師から「40歳の思考を持っている」と評される22歳。ストイックさを生んだのが、ある「叱責」がきっかけでした。
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見ている者の目を無意識に自身へ向けさせる「華」があった。神奈川大の岸川雄二監督が横浜高を視察に訪れた際のこと。お目当ては2023年ドラフト2位で中日に入団した津田啓史内野手だった。しばらく動きを見ていると、ふと目に入った選手がいた。それが庄子だった。
「津田君の横で動いてる子はなんか面白そうだなって。気付けば途中からずっと庄子を見てました。その後に(横浜高の)村田監督と話したら、『神奈川だけじゃなく関東界隈を見ても、この子より足が速いのは見たことないです』という話を聞いて。本当に体が華奢だったし、ちっちゃかったので。これは鍛えればちょっと面白いなと感じましたね」
岸川監督の見立ては間違っていなかった。「足の速い子って世の中にたくさんいるんですけど、走塁の上手い子ってそんなにいないんですよ。教えてできない“感性”と言いますか、それが彼にはあったので。逆に、走塁を教えなくてもよければ、他の部分を教えれば早く上達するなっていう印象ですよね」。入学直後から試合出場の機会を得た庄子は、「使いたくなる選手」だった。
性格面も実にプロ向きだった。「自分がうまくなること以外に、あまり興味を示さないというか。普通だったら大学生ですし、『ちょっと遊びに行きたいな』とかありますけど、それを優先して体調を崩すことは1回もなかったです。僕らが大学生のころにしごかれてやってきたことを、自分からやれるタイプ。20歳前後にして40歳くらいの考え方持っている選手でしたね」。
大学入学直後から早くも「プロ意識」を秘めていた庄子。普段の練習でも高すぎる集中力のあまり、いい意味で“近寄れないオーラ”を発していた。そんな男を岸川監督が叱責したことがある。
「勘違いすんなよ。お前のチームじゃねえんだからな」
庄子が下級生のころ。自身のプレーに納得がいかず、ふてくされた態度を見せた瞬間だった。「彼ってすごく負けず嫌いなんですよ。それは絶対に持っていてほしいんですけど、彼の場合はそれが強すぎて。野球はチームで戦うものなので、自分のプレーに対する悔しさを態度に出すと、チームのためにならないじゃないですか。悔しかったら次の打席で取り返すとか、守備の時に人一倍声を出すとか。そうやってチーム全体で戦わなきゃいけないスポーツなので。独りになるなということは伝えましたね」。
岸川監督の言葉はしっかりと伝わった。「上級生になると本当に変わりました。ベンチの中で誰よりも声を出すし、自分のプレーでチームを勢いづけたいっていう気持ちがすごく強かったですね」。持ち前の走塁センスに精神面もめきめきと成長した庄子は、一気にドラフト候補に名を連ねるようになった。
同じ神奈川大卒の梶原昂希外野手や、横浜高の度会隆輝外野手(ともにDeNA)のプレーを見てきた岸川監督は、庄子の“未来予想図”をこう表現する。「完成度という点では2人の方が上でしたけど、庄子にはまだまだ伸びしろがある。正直、どこまで成長するか分からないほど、ポテンシャルはあると思います」。
50メートル5秒7の俊足が最大の武器で、ホークススカウト陣から即戦力候補と高い評価を受ける22歳。「まだまだ足りないところもありますけど、球界を代表するような選手になりたいです」と覚悟は十分だ。ストイックに成長を続け、チームの柱となって見せる。
連載第1回はこちらから
ドラ1も…頭になかった“プロ入り” 両親の説得も「大学はいいわ」【新人連載①村上泰斗】
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(長濱幸治 / Kouji Nagahama)